ダマーズ, ジャン=ミシェル 1928-2013 Damase, Jean-Michel
解説:平野 貴俊 (2097文字)
更新日:2018年3月12日
解説:平野 貴俊 (2097文字)
20世紀フランスの作曲家、ピアニスト。ピアノ、フルート、ハープを中心とする器楽・室内楽に創作の重点をおき、50年以上におよぶ活動期間のなかで約300の作品を残した。ダマーズの音楽の特徴である簡明にして抒情的な旋律線、巧みな転調と和声の処理が生みだす色彩のグラデーションは、同時代を生きたフランセあるいはプーランクの作品にも見受けられるが、晴朗で屈託のない表情、過度に陥ることのない親密さや温かみをこれほど魅力的に表現し、その精髄を究めることのできた作曲家はダマーズを措いて他にいないだろう。
ボルドーに生まれたダマーズはまもなくパリに移り、5歳になってマルセル・サミュエル=ルソーにピアノとソルフェージュを師事する。ダマーズの母は、フォーレやラヴェルの作品を初演した著名なハープ奏者、ミシュリーヌ・カーン Micheline Kahn(1889~1987)だった(註1)。
このことは、ダマーズがハープをひいきにしたこと、彼のピアノ曲にハープのグリッサンドを模したような音型が頻出することとおそらく無関係ではない。母を取り巻く環境のおかげであろうか、9歳のときには作家コレットと知り合い、彼女の詩に曲を付けるのを見たコレットは、ダマーズを神童と評している。同じ時期、マルグリット・ロンにピアノの才能を認められたダマーズは、1937年のパリ万博でミヨー、プーランク、ソーゲなどの作品を演奏した。
12歳でエコール・ノルマル音楽院に入学しコルトーに師事、翌年にはパリ音楽院に移り、アルマン・フェルテのピアノ・クラスに入った。15歳でピアノの1等賞を獲得(註2)した後、アンリ・ビュセールの作曲クラスに入学、同時に和声とフーガをマルセル・デュプレに師事した。そして19歳のとき、《フルート、ハープ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのための五重奏曲》で作曲の1等賞、カンタータ《そして美女は目ざめた》でローマ大賞を受けた。
ダマーズはその後ピアニストとしても活躍するが(註3)、作曲を活動の中心に据えることを決めたのは、ローマ大賞受賞者としてヴィラ・メディチに滞在していたときだったという。同時代のフランスの作曲家には、創作の分野で一定の評価を得た後に教育および行政の分野に軸足を移した者も少なくなかったが、ダマーズは亡くなるまで精力的に作曲を続け、出版は2011年に至るまで毎年ほぼ中断なく続いた。1961年から1964年までエコール・ノルマル音楽院でピアノを教えたほか、パリ音楽院で研究顧問 conseiller aux études を務め(1972~1993)、演劇作家・作曲家協会(SACD)音楽大賞、パリ市大賞、フランス芸術文化勲章オフィシエを受賞/受章した。
ダマーズは交響曲を含む管弦楽曲やオペラ、バレエも作曲しているが、カタログでもっとも目立つのは、さまざまな楽器のために書かれた二重奏曲と独奏器楽曲である。出版された約70の独奏曲のうち、ピアノ曲は24(註4)、ハープのための作品は15を数える。ピアノとハープのどちらでも演奏可能な作品があるというのは興味深い。各種弦楽器・管楽器のみならず、オルガン、打楽器、ギターのための作品も残している。こうしたさまざまな楽器のための作品が存在すること、また初級・中級・上級の別がタイトルにしばしば示されていることは、ダマーズが教育用のレパートリーを重視していたことを示している。パリ音楽院の試験やコンクールの課題曲、技術の向上を目的とした練習曲も少なくない。《フルートとハープのためのソナタ第1番》(1964)や《演奏会用ソナタ》(1952、フルート、ピアノ、チェロ・アド・リビトゥム)など一部の作品は、試験やレッスンのレパートリーとして定着している。
日本でもダマーズの作品はたびたび演奏され、その音楽を愛好する人は少なくない。これには上記の事情に加え、ダマーズ自身の来日とフルート奏者清水信貴との共演、また多くの作品がアンリ・ルモワンヌ社によって刊行され、日本での楽譜の入手が比較的容易であることが関係しているだろう。ダマーズの作品はほかに、ビヨドー、サラベール、エディション・ミュジカル・トランサトランティックなどから出版されている。
(註1)カーンが初演した作品には、フォーレ《即興曲》、《塔のなかの姫君》、ラヴェル《序奏とアレグロ》、カプレ《伝説》などがある。
(註2)このときダマーズと同時に1等賞を受けたピアニストに、後にメシアン夫人となるイヴォンヌ・ロリオ(マルセル・シアンピのクラス)がいる。このときロリオとダマーズが弾いた課題曲は、院長デルヴァンクールの依頼によってメシアンが作曲した小品《ロンドー》(1943)だった
(註3)ピアニストとしては、コロンヌ管弦楽団やフランス国営放送付属の国立管弦楽団と共演し、国営放送で数々の録音を行った。1960年前後にはフォーレ《夜想曲》・《舟歌》の全曲録音を行っている。
(註4)このほか、7つの教育用ピアノ曲集に作品を寄せている。独奏曲以外では、4手連弾曲が2つ、2台ピアノのための作品が4つある。
作品(52)
ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) (2)
協奏曲 (2)
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ピアノ独奏曲 (11)
曲集・小品集 (3)
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性格小品 (7)
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