《ピアノ・ソナタ》(1953)に続く、ダマーズにとって2曲目となるピアノ曲。本作を発表した約40年後、ダマーズは同名の作品(1995)をハープのために書いているが、その主題はピアノ版《主題と変奏》の第12変奏で提示される旋律に基づいており、本作品のいわば続編となっている。《ピアノ・ソナタ》と同じく伝統的な形式に拠っているが、書法のヴァリエーションは前作に比べて格段に拡がり、自身のピアノの腕前を示すかのような華々しい効果を上げる音型も登場する。1957年にはダマーズ自身デッカ社に録音を行っており、その年と翌年にもピアノの小品を書いていることから、ダマーズはこの作品の完成をもって自らのピアノ書法がある程度の確立をみたと考えたのかもしれない。
■主題(アンダンテ)簡素な旋律がハ長調で示される。
■第1変奏(アレグロ・モデラート)ジャズを思わせるリズムに16分音符の刺繍音的音型が重なる。
■第2変奏(ポコ・ピウ・モッソ)和音の連打が特徴的。旋律が右手と左手を往復する。
■第3変奏(プリュ・カルム)8分の5拍子の舟歌のようなリズムの上に滑らかな旋律が乗る。
■第4変奏(テンポ・デュ・テーム)冒頭の主題がやや凝った和声とともに再現される。
■第5変奏(アレグロ)後半は32分音符のグリッサンド的音型が即興的に奏される。
■第6変奏(モデラート)軽快なシンコペーションと音程のぶつかり合いがダマーズらしい。
■第7変奏(ポコ・ピウ・レント)主題、第4変奏と同じく和声的なテクスチュアを特徴とする。
■第8変奏(アレグレット・トランクイロ)左手の3度の連打が、ゆったりとした第7変奏と動的な第9変奏との橋渡しを果たしている。
■第9変奏(ア・テンポ・ポコ・ピウ・モッソ)拍子なし。すべて八分音符で淀みなく動く。
■第10変奏(モデラート)3+2の拍が第3変奏、シンコペーションが第6変奏を想起させる。
■第11変奏(ポコ・ピウ・モッソ)旋律が極端に単純化され、第12変奏の新たな主題の出現へとつながる。
■第12変奏(アレグロ・マ・ノン・トロッポ)第13変奏と併せてコーダの役割を果たす。 36分音符の走句がやがてグリッサンド的な上行・下行音型となる。
■第13変奏(モルト・モデラート)高音域をきらきらと彩る旋律が控え目な終結を導く。