ホーム > ベートーヴェン > ピアノ協奏曲 第4番 ト長調

ベートーヴェン :ピアノ協奏曲 第4番 ト長調 Op.58

Beethoven, Ludwig van:Konzert für Klavier und Orchester Nr.4 G-Dur Op.58

作品概要

楽曲ID:417
作曲年:1805年 
出版年:1808年 
初出版社:Bureau d'art et d'industrie
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) 
ジャンル:協奏曲
総演奏時間:36分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

解説 : 今関 汐里 (2068文字)

更新日:2021年2月5日
[開く]

基本情報

編成:ピアノ、フルート1、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部

献呈:ルドルフ大公

初版:1808年

初演:1808年3月 ロプコヴィツ侯爵邸にてベートーヴェンが自らピアノ独奏を担当(半プライヴェートの空間での初演)。12月22日 アン・デア・ヴィーン劇場にてベートーヴェン自らがピアノ独奏(公開初演)。

 

総説

ベートーヴェンのピアノ作品およびその音楽語法上の革新を語る際に、ピアノの改良に関する歴史的側面を度外視することはできない。ピアノはヴィーン、ロンドン、パリなどの各都市の様々な製作者達によって制作され、それぞれが異なる改良を重ねていたため、楽器の特質も色とりどりだった。ベートーヴェンは生涯に10以上のピアノを手にしたと言われているが、それは彼がピアノそのものの機能の向上が演奏法の発展に欠かせないと考えていたからだろう。

1803年、ベートーヴェンはフランスのエラール社の最新式のピアノを手にし、数多くの名作を生み出した。このピアノは、それまで彼が使用していたヴィーンの楽器とは大きく異なる構造と音色をもっていた。跳ね上げ式と呼ばれるアクション機構を持つヴィーンの楽器は、華奢な作りで、軽やかで繊細な音色を奏でる。一方でエラールから贈られたピアノは、イギリス式の突き上げアクションを採用しており、より堅牢な作りで、力強く深みのある音色を発することができた。音域も、それまでに使っていた5オクターヴ(F1–f3)から5オクターヴ半(F1–c4)にまで拡大し、膝てこで操作していたダンパーは足で踏むペダルにとって代わられ、ダンパーを含めて計4本のペダルが備えられていた。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲には、ハイドンモーツァルトなどの先人たちの例から離れて、明らかにオーケストラと対峙するピアノのダイナミズムを感じることができる。とりわけ、エラール・ピアノで作曲された第4番協奏曲では、オーケストラのトゥッティとピアノ・ソロが呼応し、時としてせめぎ合いをみせる。抒情的性格を前面に押し出しつつ、楽器の音域拡大の影響を受けてか高音域でのピアニスティックなパッセージも頻出する(とりわけ第1楽章、終楽章)。加えて、第一楽章冒頭でのピアノ・ソロによる幕開けは、歴史上新たな試みであり、聴衆の意表をつくと同時にピアノの存在感をより一層高める効果があったに違いない。この、ベートーヴェンによって確立されたよりシンフォニックな性質を備えた協奏曲様式は「皇帝」で更に洗練され、ロマン派以降シューマンリストグリーグらの協奏曲の雛形となった(よく知られた例外はショパン)。

また、本作品は、ベートーヴェンが自らピアニストを務めて初演された最後のピアノ協奏曲として知られている。現に、第5番「皇帝」はベートーヴェンの弟子チェルニーによって初演された。

 

楽章ごとの解説

第1楽章

Allegro moderato

ト長調。4分の4拍子。協奏ソナタ形式を踏襲しているものの、冒頭の第1主題は斬新にもピアノ独奏によって奏でられる。このロ音の同音連打で始まる素朴な主題は、この協奏曲のスケッチが交響曲第5番「運命」の1ページ目のスケッチの直後に書かれていることもあり、しばしば「運命動機」との関連が指摘されている。また、この主題は直後オーケストラによって3度調にあたるロ長調で演奏される。この3度調へのこだわりは、ベートーヴェンの全曲のピアノ協奏曲で一貫してみられるものであり、属調や平行調を基盤とした古典からの逸脱として見ることができる。ベートーヴェンによって作曲されたカデンツァを含めて、作品全体にはピアニスティックなパッセージが散りばめられ、華やかなピアニストの魅せ場がたくさん設けられている一方で、甘美で息の長い副次主題やオーケストラとの掛け合いが作品の抒情性を際立たせている。

 

第2楽章

Andante con moto

ホ短調。2分の2拍子。付点リズムで刻まれる重々しく厳めしい弦楽のユニゾンと、レガートで悲哀に満ちたピアノ・ソロのコントラストが際立っている。ピアノの悲愴的な訴えを撥ね退けるようにffで演奏される弦楽は、次第にピアノに寄り添うように音量を落とし、真の主役がピアノであるとそれとなく気づかせるかのようにも聴こえてくる。

 

終楽章

Rondo Vivace

ト長調。2分の2拍子。ロンド形式。第2楽章はホ短調の主和音(e-g-h)で終わったが、そこから間髪入れずに同じ構成音をもつハ長調の主和音(c-e-g)で本楽章に流れ込む。また冒頭のeの同音連打は、第1楽章冒頭のh音の同音連打をも彷彿とさせる。緩徐楽章から雰囲気は一変して、付点リズムのロンド主題が躍動感をもって奏でられる。快活なロンド主題が跳躍進行であるのに対し、副次主題は順次進行を基盤としており、より旋律的でカンタービレな性格を有している。第1楽章と同様に、ベートーヴェンは本楽章のためにカデンツァ(35小節)を書き残している。

 

 

 

 

執筆者: 今関 汐里

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:20分00秒 

楽譜0

編曲0

第2楽章

総演奏時間:6分00秒 

楽譜0

編曲0

第3楽章

総演奏時間:10分00秒 

楽譜0

編曲0

楽譜

楽譜一覧 (0)

現在楽譜は登録されておりません。