ベートーヴェン : ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 Op.37
Beethoven, Ludwig van : Konzert für Klavier und Orchester Nr.3 c-moll Op.37
作品概要
作曲年:1796年
出版年:1804年
初出版社:Bureau d'art et d'industrie
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ)
ジャンル:協奏曲
総演奏時間:36分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(396 文字)
更新日:2010年1月1日
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執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (396 文字)
このピアノ協奏曲は、第1・2番とはやや間隔を空け《第3交響曲》とほぼ同じ時期に完成した。前作よりも一層ベートーヴェンらしさが増しているが、それは《悲愴ソナタ》や《運命交響曲》と同じハ短調という、ベートーヴェン的な調の選択にもよっているのかもしれない。19世紀、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の中で最も愛され頻繁に演奏された。
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ ハ短調 4分の4拍子
第1主題が《第5交響曲》のフィナーレを先取りしていることは、非常に興味深い。
第2楽章 ラルゴ ホ長調 8分の3拍子
第1楽章の平行調の変ホ長調ではなく、意表をついたホ長調。おだやかに美しく流れる。
第3楽章 ロンド アレグロ 4分の2拍子 ハ短調
ロンド主題は、冒頭の減7度の下行により独特の緊張感が生み出される。この主題が、様々な調で顔を出し、最後はプレストのハ長調に転調し、華麗なピアノの技巧的パッセージで幕を下ろす。
成立背景 : 原 晶穂
(831 文字)
更新日:2014年11月14日
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成立背景 : 原 晶穂 (831 文字)
《交響曲》第5番(通称「運命」)、《ピアノ・ソナタ》第5番(この作品の第3楽章には「運命」と関連付けられる連打音が存在)でも用いられたように、ハ短調という調性はベートーヴェンにとって「苦悩」を象徴するものであった。
本作は「傑作の森」(ロマン・ロランの表現)と呼ばれるベートーヴェンの中期作品群(1803~12)の始まりを告げる作品である。この時期、ベートーヴェンは18世紀音楽の秩序正しい古典主義を脱し、新たな境地へと漕ぎ出し始めた。
この作品は彼のピアノ協奏曲全5曲の中央に位置し、形式上の発展における転換点となった記念すべき作品でもある。以下の三点がその転換の大きな特徴として挙げられる。
⑴独奏楽器の登場の仕方
⑵楽章内部および楽章間の統一
⑶調性・和声使用の範囲の拡大
第1番から第5番までを通して考えると、ベートーヴェンがいかにしてモーツァルトら従来の古典期作曲家から協奏曲の書法を受け継ぎ、発展させ、さらに革新を加え、曲にはっきりとした性格を与えたかがうかがえる。
ベートーヴェンは交響曲作曲家としての発想が先行しがちであったため独自の協奏的手法の確立に時間を要した。協奏曲における対比と調和への挑戦はモーツァルト風の第2番、独自の様式を模索する第1番、完全に彼自身のスタイルを確立する第3番を通して続けられた。第3番において、独奏ピアノは名技性を駆使して演奏上の効果を上げつつも、オーケストラから分離することなく、堅固な構造を楽曲全体に与えた。また、オーケストラは従来のような伴奏の域を脱し、結果、各楽器が一段と各自の特色を発揮して全体を引き立てているようになった。そして、ピアノ協奏曲5番「皇帝」では、当時の独奏部分を独立させていく傾向(代表的な作曲家にフィールドやカルクブレンナー)から外れ、独奏ピアノとオーケストラの件密に組み合わされたアンサンブルの対比による、ベートヴェンらしい堂々とした堅固な構造が完成され、協奏曲に対して彼なりの答えが出たといえる。
編曲・関連曲(8) <表示する>
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調:ハ短調 総演奏時間:18分00秒