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リスト:パガニーニ大練習曲集

Liszt, Franz:Grandes études de Paganini S.141

作品概要

作曲年:1851年 
出版年:1851年 

楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:29分00秒

解説 (1)

執筆者 : 横田 敬 (1564文字)

更新日:2006年12月1日
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その技巧のあまりのすさまじさのために「悪魔に魂を売った」と言われたヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、パガニーニ(1782-1840)。リストがその演奏を初めて聴いたのは、1832年、21歳の時であった。そのとき、感激のあまり、自分は「ピアノのパガニーニになる!」と叫んだというのは、有名な逸話である。この衝撃的な出会いは、ピアノ史上に革新的な作品を生み出すことになった。

まず、リストは、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番の終楽章を基に、《「鐘」によるブラヴーラ風大幻想曲》(S.420)を作曲した。これは、のちの《パガニーニによる超絶技巧練習曲集》(S.140)、そして《パガニーニによる大練習曲》(S.141)の第3曲『ラ・カンパネッラ』の原形となった曲である。

そして、1838~1839年にかけて作曲された《パガニーニによる超絶技巧練習曲集》において、リストのパガニーニ研究の成果は一応の完成をみる。しかし、ここで納得するようなリストではなく、1851年に大幅に手を加え、《パガニーニによる大練習曲》と名付けて改訂版を出版した。

リストはパガニーニの楽譜を、ただピアノ用に編曲したわけではない。上述の宣言どおり、パガニーニがヴァイオリンという楽器で実現した高度なテクニックを、ピアノ独自の語法によって表現しようと試みている。そこから新しい語法や技巧が編み出されることとなり、結果として非常に革新的で、類い稀な難易度の高さを誇る作品が生み出されることとなったのである。さらに、《パガニーニによる大練習曲》への改訂においては、簡潔なテクニックによる表現の洗練が目指された。この改訂により、各曲は「練習曲」から「キャラクター・ピース(性格小品)」へと、その装いを変化させている。

第1曲『トレモロ』(ト短調)は、パガニーニの《24のカプリース》第5番を原曲とする序奏と終結部、同じく《24のカプリース》の第6番を原曲とする主部からなる。第2曲『オクターヴ』(変ホ長調)は、《24のカプリース》第17番による。いわゆる「リストの半音階」と呼ばれる、左右交互の手で取り分ける半音階が見られる。

この曲集中もっとも有名な第3曲『ラ・カンパネッラ』(嬰ト短調)は、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調の第3楽章を原曲とする。この第3曲に関しては、《大練習曲》の初版である《パガニーニによる超絶技巧練習曲集》の第3曲とは大きな違いがある。初版ではパガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調からの素材が目立つのに対し、《大練習曲》では、第1番の素材はまったく見られない。また、調号が初版の変イ短調から嬰ト短調に変化している。初版に比べ、《大練習曲》のほうが高音域を駆使し、同音反復を効果的に使用したよりきらびやかな音楽になっているのも注目すべきところである。

第4曲『アルペッジョ』(ホ長調)の原曲は、《24のカプリース》第1番。この曲も、初版と改訂版が大幅に違っている。改訂版の楽譜は、ヴァイオリンと同じく1段譜になっており、初版に比べると、パガニーニの原曲に非常に忠実な編曲となっている。

第5曲『狩り』(ホ長調)は、《24のカプリース》第9番を原曲とする。初版に比べると、やはり《大練習曲》のほうが軽快な音楽となっている。曲の中間部には、ピアノ史上比較的珍しい重音のグリッサンドが見られる。

第6曲『主題と変奏』(イ短調)は、パガニーニ《24のカプリース》の中でも最も有名な第24番を原曲とする作品。リストのほかにも、この主題を基に、ブラームスラフマニノフシマノフスキルトスワフスキなど、多くの作曲家が変奏曲を書いている。原曲は11の変奏と終結部からなるが、リストもこの構成を踏襲しており、この第6曲は11の変奏とコーダからなっている。

執筆者: 横田 敬

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