作品概要
出版年:1806年
初出版社:Bureau de musique
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:前奏曲
総演奏時間:12分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
執筆者 : 朝山 奈津子
(1511 文字)
更新日:2008年6月1日
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執筆者 : 朝山 奈津子 (1511 文字)
バッハは《平均律クラヴィーア曲集》、《インヴェンション》、《シンフォニア》など、内容も曲数もひじょうに豊かな学習教材を制作している。それらは当初から明確かつ綿密な計画を持って進められていたが、その際にはいくつかの候補の中からそれぞれの主旨に合わせて選択したり、移調や改訂を加えたりすることがあった。一方では、曲集に取り込まれずに残された作品や異なる調の原曲とおぼしきもの、簡略な初期稿なども多数存在する。9つ、6つ、および5つの小前奏曲は、おそらくそうした小品を後生がまとめたもので、やはり学習教材として弟子から弟子へと伝承された。19世紀半ばのペータース社の鍵盤作品集(チェルニー/グリーペンケルル編)によって、曲集のまとめ方が定着、普及したとみられる。
この曲集は《クラヴィーア初心者のための6つの小前奏曲》というタイトルをもち、バッハの周辺で6曲にまとめられたと見られる。現在もっとも重要な資料は、バッハの最後の弟子ヨハン・クリスティアン・キッテル(1732-1809)が筆写したもので、おそくとも1780年代までに書き写された。キッテルは後年、多くの弟子を持ち、中部ドイツでバッハの伝統と伝承を確立した人物である。
ここに含まれる6曲は調に従って配列(C-c-d-D-E-e)されており、バッハがより大きな曲集を構想していた可能性も考えられる。また、《9つの小前奏曲》や《5つの小前奏曲》に比べると作曲技法が充実し、規模が大きく、各曲とも形式がよく整っている。以下、形式と書法の点から各曲をみてみよう。
第1番 ハ長調 BWV 933
前半と後半、更にその中が前楽節と後楽節に分かれている。音程幅の広い跳躍と歯切れよいリズムによる前楽節が、音階と淡々とした伴奏による流れるような後楽節に対比され、きわめて整然とした構成になっている。曲集の幕開きにふさわしい、堂々とした作品である。
第2番 ハ短調 BWV 934
4分音符が三拍子を刻み続けるメヌエット風の小品。前半は明確に2小節1単位だが、後半は1小節ごと細かに変容しながら進む。前半では8分音符の歩みを左手のパートが引き取って終止するが、後半はすぐに主旋律が右手に戻り、左手にはこの曲で初めて4分休符が現れる。淡々とした中のわずかな変化によってニュアンスが演出されている。
第3番 ニ短調 BWV 935
両手が模倣し合うことに加え、前半と後半では主題の音型が反行関係にある。さらに、前半後半それぞれの最終小節の音型が統一されている。こうした書法は、バッハの鍵盤用舞曲にしばしば見られる。
第4番 ニ長調 BWV 936
3声で開始する。いっけん声部書法は維持されていないようだが、実は第9-16小節および第40-44小節は、右手のパートだけであたかも2声部が対話しているかのようにきこえる。対する左手は通奏低音のバスを模したもので、そのため全体はトリオ・ソナタ風ということができる。
第5番 ホ長調 BWV 937
前半と後半で左右の手が動機を交換している。その対照性は、楽譜を図形として眺め比べてみればよく判る。しかし、後半ではタイによるシンコペーションを織り交ぜ、リズムに変化を付けている。
第6番 ホ短調 BWV 938
冒頭は前半後半とも両手で動機を交換し合う形で開始するが、その後の展開はいくぶん異なっている。簡明なテクスチュアと単純なリズムのみで構成される前半に対し、後半はタイや音域の移動によって豊かな表情を見せる。しかしいずれにせよ、2小節1単位を維持し、模続進行や保続音が多用されるため、曲の進行はごく僅かずつの変化を積み重ねて新たな境地に到達するような印象を与える。
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