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ショパン : ノクターン第20番 嬰ハ短調 KK.IVa/16

Chopin, Frederic : Nocturne (lento con gran espressione) cis-moll KK.IVa/16

作品概要

楽曲ID:483
作曲年:1830年 
出版年:1875年
初出版社:Leitgeber
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ノクターン
総演奏時間:4分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展2 発展3 発展4 発展5

楽譜情報:59件

解説 (2)

解説 : 林川 崇 (1063 文字)

更新日:2010年1月1日
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Nocturne cis-moll Op.posth.

1830年にウィーンで完成され、ショパンの姉ルドヴィカに送られた作品。慣例的にノクターンの1つに数えられているが、これは、ルドヴィカの編纂したショパンの未発表作品の目録の中で「ノクターンの様式のレント」と記されているからであり、恐らく、ショパン自身はノクターンと命名しなかったと推測されている。そのため、速度表示の「Lento con gran espressione」がそのままタイトルとして使われることも多い。ルドヴィカに送られた手稿は、後にショパンの父の友人で、民俗学者・音楽家のOskar Kolbergによって筆写され、それをもとに1875年に初版が出版された。

曲は、大きく分けると、前奏-A-B-A’-コーダとなる。最初のAでは、いかにも歌唱的な旋律が印象的だが、メロディの最低音と最高音の幅は、3オクターヴと半音であり、実際に歌うことは無理である。また、Aの最後にはさりげなく半音階的和声が使われ、微妙な陰影が与えられている。

続くBは、Aと同じ伴奏型が続く前半と、3/4に拍子が変わる後半とに分けられ、ショパン自身の《ピアノ協奏曲》第2番、及び彼の歌曲《乙女の願い》のモチーフが引用される。

譜例1 第23~24小節

譜例2 《ピアノ協奏曲》第2番 第1楽章 第41~42小節

譜例3 第21~23小節

譜例4 《ピアノ協奏曲》 第2番 第3楽章 冒頭

この部分の前半で、ショパンは当初、左手4/4拍子1小節に対し、右手3/4拍子2小節という書き方をしていたが、難しすぎると判断したのか、ルドヴィカに送られた手稿では、両手とも2/2拍子で弾けて、リズムも簡略化されたものになっている(譜例3; 通常この簡略化された形で演奏されるが、これをショパンの妥協と考えたのか、当初の複雑な形で演奏する人もいる)。

A’に戻って第53小節目に入ると、音楽がVに半終止して落ち着くかと思わせたところで、旋律は一気に上昇し緊張を高め、次の小節でバスがfisisに下がり減七の和音になると、緊張は頂点に達する。この53小節目の旋律最後の音であるfisと54小節目の左手冒頭のfisisの間には、和声学で避けることが望まれる対斜が生じている。(譜例5)。

譜例5 第50~52小節

そして、旋律は下降を続けI度に落ち着くと、伴奏はI度とその刺繍和音の2種類を延々繰り返す。右手もまた、同じことを何度もつぶやくが如く、音階の上昇と下降を4回繰り返し、最後に突然同主長調になってピカルディ終止する。

執筆者: 林川 崇

演奏のヒント : 大井 和郎 (876 文字)

更新日:2018年3月12日
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ノクターン 遺作 Cis-moll  このノクターンに関しては特にこれと言った演奏のヒントは無く、典型的な注意事項になります。 ◎ 1-2小節間と3-4小節間は、3-4の方を少し弱く弾くとよいです。それを計算して1-2を少しだけ強めのppにします。この4小節間、一番上の音が大切ですので、メロディラインははっきりと出します。 ◎ 5小節目以降、バランスに気をつけます。左手は可能な限りppで良いでしょう。このノクターンの伴奏形は、全ての表拍に音符が存在します。つまり拍を刻みやすい音楽で、拍を刻んでしまうと音楽が縦に聞こえ、横に流れません。解決法としては左手を可能な限りのppにすることで、拍を感じさせずに演奏することができます。 ◎ 11小節目、左手のアルペジオの伴奏形が初めて崩れ、メロディックになるところです。4拍目、右手のDis-Cisと3度のハーモニーになります。意識をすると良いでしょう。 ◎ 17-19小節間、ナポリの6やジャーマン65の和音で非常にドラマティックな部分です。音量を落としすぎないように。19小節目の2拍目Aは、弾き辛そうに弾くと効果が出ます。 ◎ 21-24小節間と、25-28小節間では異なった強弱が望ましいのですが、奏者が考え、感じたようにどちらかのダイナミックを大きく、もう一方を小さくします。必ずしも、21小節目の冒頭のpppを厳守する必要はないと思います。要は、21小節のpppと25小節のsotto voceはどちらがよりピアノに感じるかという議論になります。 ◎ 33-45小節間、ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、ここはピアノコンチェルトの1部です。ですからテンポをここだけ速く弾くピアニストが多くいます。確かに、ここをin tempoどおりに弾くと間延びするかもしれません。昔の記憶がよみがえるような部分とお考えください。 ◎ 57-60小節間、右手の細かい音符の上行下行があります。ここをこれ見よがしに猛スピードでリストのエチュードのように弾く奏者がいますが、ここは決して急ぐ必要はありません。

執筆者: 大井 和郎

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