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ショパン :ピアノ協奏曲第2番 Op.21 CT48 ヘ短調

Chopin, Frederic:Concerto pour piano et orchestre no.2 f-moll Op.21 CT48

作品概要

作曲年:1829年 
出版年:1836年 
初出版社:Leipzig, Paris and London
献呈先:Comtesse Delphine Potocka née de Komar
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) 
ジャンル:協奏曲
総演奏時間:32分00秒

解説 (1)

執筆者 : 岡田 安樹浩 (2016文字)

更新日:2010年3月1日
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ショパン最初のピアノ協奏曲(第2番)は、1829年に着手され、翌年に完成された。ショパンは既に『ラ・チ・ダレム・ラ・マノの主題による変奏曲』や『クラコヴィアク』といった管弦楽を伴ってピアノの技巧を披露する作品を作曲しており、ワルシャワのみでなくウィーンでも成功を収めていた。しかし彼は、自身の更なる成功のためには3楽章構成の「協奏曲」が必要だと感じていた。それは、フンメルやフィールドといった当時のヴィルトゥオーゾたちが、古典的な形式によるピアノ協奏曲によって圧倒的な成功を収めていたことに大いに影響されてのことであり、ショパンのピアノ協奏曲は、当然ながら彼らの作品様式の延長線上に位置づけられる。

しばしば指摘されるオーケストラ部分の貧弱さは、ショパンのピアノ協奏曲がシューマンやブラームスといったシンフォニー作曲家のそれとは本質的に異なっているためであり、これを議論することは無益である。またヤン・エキエルが指摘しているように、作曲者自身がオーケストレイションを行ったという確かな証拠はなく、別人の手によって行われた可能性も高い。他方で、作品の構成面での薄弱さもつとに指摘されるところである。近年は、こうした作品の弱点を、若き天才の独創性などとして肯定的にとらえる傾向が認められるが、それは作品の本質を見誤ることになる。

例えば以下で述べるように、この協奏曲の第1楽章の調性構造は、ソナタ形式の基本原理と矛盾している。ショパンはこの協奏曲以前に、ハ短調の『ピアノ・ソナタ』や『ピアノ三重奏曲』などのソナタ形式をもつ楽曲を、習作という位置づけで作曲しているが、いずれにおいても調の設定が古典的なソナタ形式の規範を無視している。

このことは、ヘ短調協奏曲や、次作のホ短調協奏曲における調性構造の薄弱さと無関係ではなく、当時のショパンが未だ形式や和声の面で、古典を十分に消化できていなかったことを反映している。従って、こうした点を安易に「独創性」と肯定的に捉えることは、若きショパンの姿を歪めることになると言える。すなわち、ワルシャワ時代のショパンの美徳は、何よりもまずベルカント的な旋律美、そして華やかなヴィルトゥオーゾ・パッセージであって、楽曲の構成は二の次なのである。

このような理解は、作曲家としてのショパンを貶めるものではなく、演奏者が認識しておかなければならない重要な点であろう。

第1楽章 ヘ短調 4分の4拍子

しばしば協奏曲風のソナタ形式として説明されるが、ソナタ形式を前半における調性的対立を後半において解決するという調性的な枠組みを前提として理解する以上、この楽章は2つの主題の提示とそれらの再現をもつ3部分形式、ないし2部分形式である。

まずオーケストラのみによって、ヘ短調と変イ長調による2つの主題提示が行われ、続いて独奏ピアノが、装飾を加えながら両主題を繰り返す。こうした構成法は、たしかに協奏曲風のソナタ形式に典型的なものである。そして推移部が拡大され、独奏ピアノの技巧的なパッセージの見せ場となる。

展開部風の第2部(第205小節~)は、ヘ短調主題の動機を主とした推移的な部分である。オーケストラがこの動機をゼクエンツ風に繰り返すなか、独奏ピアノが即興的なパッセージを展開する。オーケストラの総奏が楽章の頂点を築くと、すぐに沈静化して冒頭の主題がピアノで再現される(第268小節~)。この楽章を3部分形式とすするならば、ここからが第3部ということになる。

ヘ短調主題に続いて、すぐに変イ長調主題が調性を移すことなくあらわれる。そして、技巧的なパッセージによる推移部となり、冒頭主題が回帰するコーダをもって楽章が閉じられる。

第2楽章 変イ長調 4分の4拍子

第1・3楽章に先立って成立した叙情的な楽章。作曲者自身の言説によれば、彼が当時「理想の人」と呼んだコンスタンツヤを思って作曲したのだという。

弦楽合奏の短い導入に続いて、独奏ピアノによってノクターン風の主題が歌われる。

楽章全体を通して、独奏ピアノが様々な装飾を駆使して旋律を歌ってゆく。最後に、導入部の主題が回帰して楽章を閉じる。

第3楽章 ヘ短調 4分の3拍子

ロンドと説明されることが多いが、舞曲形式が拡大した2部分形式とみるべきだろう。

クヤヴィアク風の主題が独奏ピアノによって提示される。オーケストラのエピソードに続いて、独奏ピアノによる技巧的なパッセージの連鎖が始まり、マズルカのリズムにのって次々と楽想が展開してゆく。とりわけ、8分3連音符と付点リズムが特徴的なユニゾン楽想(第145小節~)は、この楽章全体の民俗音楽的な雰囲気を一層高めることに貢献している。

冒頭主題が回帰して後半部分となるが(第325小節~)、オーケストラによるエピソードの末尾が変形されてヘ長調(同主長調)へと転じる。ピアノの技巧的なパッセージを経て、マズルカ風の楽想が回帰して楽曲を閉じる。

執筆者: 岡田 安樹浩

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:14分00秒 

楽譜(0)

第2楽章

総演奏時間:9分30秒 

楽譜(0)

第3楽章

総演奏時間:8分30秒 

楽譜(0)

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