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アルカン, シャルル=ヴァランタン :片手ずつ、および両手のための3つの大練習曲 [Op.76]

Alkan, Charles-Valentin:Trois grandes études pour les deux mains separées et reunies [Op.76]

作品概要

楽曲ID:4680
出版年:1839年 
初出版社:Richault
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:練習曲
総演奏時間:30分30秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (1)

成立背景 : 上田 泰史  (1210文字)

更新日:2018年3月12日
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アルカンが練習曲というジャンルに取り組んだ時期は、比較的遅い。J.-B. クラーマーが出版した84の練習曲(1804、1809)以後、練習曲集は反復的な音型に基づく3部形式で書かれることが一般的となっていた。しかし、1830年代に入ると、ヴィルトゥオーゾたちは単なる練習という実用的目的を超えて、練習曲を通して過激な演奏技巧を追究するようになった。パリではショパン(1833、37)、フンメル(1833)、ヒラー(1834)、カルクブレンナー(1835、39)、タールベルク(1837、38)、ヘンゼルト(1838)、タウベルト(以下同)、ベルティーニラヴィーナローゼンハインリストE. ヴォルフ(同)らが次々に練習曲集を発表し、ピアノの演奏技術と音楽的表現の可能性を拓いた。  こうした中にあって、アルカンは1840年までは練習曲という名称を避けつつ、独自に演奏技巧と創作の可能性を探究していた。1837年に「12のカプリース」というシリーズ名で出版された一連の曲集(作品12、13、15、16)がその例である。  しかし、1830年代後半にはリストの《24の大練習曲》(S 137、実際には12曲のみ出版)第10番のように、複数の主題的旋律をもつソナタ風の形式で書かれた練習曲や、ヘンゼルトの《12のサロン用練習曲》作品5(1838)第6番のように、変奏形式に基づく練習曲が書かれるようになっていた。練習曲というジャンルの枠組みは1840年までに押し広げられ、いっそう多様で豊かなピアノ音楽の表現可能性追究の場となっていた。アルカンの《3つの大練習曲》の出版は、まさにこうした練習曲というジャンルがヴィルトゥオーゾの野心的ジャンルとして確立された時期に一致している。  形式的観点から見た場合、各曲は第1番から順に、ロンドと変奏曲の特徴を備えた幻想曲、変奏曲、ロンドとして書かれている。一方で、アルカンは練習曲というジャンルの本来の意味も意識している。それは各曲をそれぞれ左手、右手、両手のために書いたという点に表れている。ルイ・アダンのパリ音楽院公式メソッド(1804)以来、パリ音楽院のピアノ教育は10指を独立させ、両手に均等な演奏能力を獲得させなければならいという考えの下に行われており、フランスのピアノ演奏教育の基礎をなす考え方として定着していた。両手の独立という理念は「片手ずつ、および両手のための」というタイトルにそのまま反映されている。第3曲は両手のために書かれているが、終始ユニゾンで書かれており、演奏者の手と指の完全かつ均質なコントロール能力を示すことが主要な目的となっている。  このように、アルカンはこの作品で、音楽院の正統的なメソッドに立脚しながらも、そこに自らの卓越した演奏能力と作曲の技量を上乗せして、当代最高のピアニスト兼作曲家としての自らの実力と独自性を示そうとしたのである。

執筆者: 上田 泰史 

楽章等 (3)

左手のための幻想曲 [Op.76-1]

調:変イ長調  総演奏時間:9分30秒 

楽譜0

編曲0

右手のための序奏、変奏とフィナーレ [Op.76-2]

調:ニ長調  総演奏時間:16分00秒 

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両手のための練習曲、相似的で無窮動な動きによる [Op.76-3]

調:ハ短調,ハ長調  総演奏時間:5分00秒 

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