ラコンブ 1818-1884 Lacombe, Louis
解説:上田 泰史 (643文字)
更新日:2010年1月1日
解説:上田 泰史 (643文字)
今からちょうど200年ほど前の1810年代のヨーロッパでは、「ロマン主義」とよばれる芸術の新時代を担う新しいピアノ音楽の名手たちが次々に誕生していた。1810年生まれのショパン、シューマンに続き、11年にリスト、12年にタールベルク、13年にアルカン、ヘラーといった才人たちが相次いで現れた。とくに産業が目覚ましい発展を遂げたパリでは、ロンドンとならんでピアノ産業・演奏会産業が急速に発達し、ヨーロッパ中から大勢のピアニスト兼作曲家たちが集まり、卓越した演奏技巧、想像力豊かな発想を通してその覇を競い合った。パリの楽壇ではショパンやリストのような「異国人(エトランジェ)」がその強烈な個性によったスターダムにのし上がったが、実は1810年世代のフランス人音楽家の中には、彼らと並び称されたピアニスト兼作曲家たちが少なからず存在したことが近年の研究によって明らかにされてきた。まだその作品はおろか名前さえ一般には殆ど知られていないが、13年生まれのアルカン、ドビュッシーにピアノを教えたパリ音楽院教授で16年生まれのマルモンテル、17年生まれのプリューダン、18年生まれのラヴィーナはフランスの輝かしい1810年世代を代表する「フランス派(エコール・フランセーズ)」の旗手である。そしてルイ・ラコンブ Louis Lacombe (1818.11.26-1884.9.30) もまた、この一団にその名を留める博識で個性豊かな作曲家であると同時に驚嘆すべき演奏技巧を誇るピアニストであった。
作品(5)
ピアノ独奏曲 (3)