
解説:上田 泰史 (969文字)
更新日:2010年1月1日
解説:上田 泰史 (969文字)
マルモンテルは、ドビュッシーやビゼーを教えた音楽院ピアノ科教授としてその名を今に留めている。彼は、1816年、パリの南、リヨンの西に位置するクレルモン・フェランという街に生まれた。1827年、パリ音楽院に入学し、翌年にはピアノ科に登録し、ヅィメルマンの門下生となり1837年には一等賞を得てピアノ科を修了した。このヅィメルマンのクラスからは、アルカンやフランク、ラヴィーナやプリューダンといったこの時代のフランスを代表するピアニスト兼作曲家が多く輩出されている。ピアノの他、彼はスコア・リーディングに加え厳格な作曲法(対位法・フーガ)を学び良い成績を修めた。ピアノ科を出て間もなく、彼はソルフェージュ科の教員となり、46年にはアメリカ旅行で不在となっていたピアノ教授H.エルツのクラスを代行した。音楽院への貢献が関係者に評価された彼は、プリューダンやアルカンといった候補者を抑えて1848年、ヅィメルマン教授の後任として教授の座についた。以後、彼はビゼー、ギロー、デュボワ、ドビュッシー、プーニョといった19世紀後半から20世紀前半に活躍した殆どのフランスの作曲家兼ピアニストたちの教育に携わり人々の尊敬を集めた。マルモンテルの作品は、作品番号で180番台までが確認されている。その中には、規模・質において傑出した《24の様式と華麗さの大練習曲》作品85を含む複数の練習曲集等の教育的な作品、二つのソナタ(作品8と86)、《創作主題による変奏曲》作品49などの厳格なスタイルの作品、その他多数の性格小品が含まれる。彼の小品にみられる都会的な空気は1886年にパリを訪れ《ドゥムカ》をマルモンテルに捧げたチャイコフスキーのピアノ作品にも反映している。作曲以外の領域では19世紀以前の音楽の楽譜校訂を手掛け、1852年以降、フレスコバルディからショパンに至る曲集《ピアノのエコール・クラシック》を5集にわたって刊行した。特に第4集に含まれるショパン選集は、19世紀のフランスにおけるショパン作品の定着に決定的な役割を果たした。世紀後半、マルモンテルは著述活動も行った。『著名なピアニストたち』や『同時代のヴィルトゥオーゾたち』(いずれも未翻訳)などは彼の同時代を生きた音楽家たちの列伝であり、この時代のピアノ音楽研究の重要な資料となっている。
作品(151)
ピアノ独奏曲 (30)
曲集・小品集 (9)
練習曲 (24)
マズルカ (7)
ワルツ (10)
その他の舞曲 (5)
ノクターン (7)
無言歌(ロマンス) (6)
カプリス (7)
舟歌 (4)
性格小品 (17)
種々の作品 (18)