作品概要
作曲年:1717年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:組曲
総演奏時間:19分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
執筆者 : 丸山 瑶子
(816 文字)
更新日:2011年8月20日
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執筆者 : 丸山 瑶子 (816 文字)
第3番 ニ短調 HWV428
プレリュードとフーガという対を成す楽章で始まり、舞曲楽章が続く。プレリュードと初めの2つの舞曲楽章は出版用の新作である。
プレリュードは装飾的な音形が和音変化に従って展開される、第1番と同じタイプだが、第3番では拍子感が保たれている。装飾音形のパターン化した上下動はリズムの違いによって変化が付けられている。
第2楽章のフーガは、自筆譜より1718年完成とされる。主題の記譜上の付点リズムはイネガル奏法が求められていると解釈できる。主題は後々転回形となるが、特に間奏部で早くも下行形となる7度の音階は楽章全体で活用される。
4声体のアルマンドはイタリア様式から影響されたもの。前半部では属調に転調し長3和音上に終止する。後半部では属調、主調平行長調、下属調を経て主調が回帰する。後半では、同一音上の停滞を含む2度進行から成る動機が、一方で装飾を伴い(第15小節)、他方では内声に(第16小節)、そして再び上声にと多様に活用される。
クーラントの3/4拍子と複数声部により補填される8分音符の一定のリズムは、イタリア様式の特徴を反映する。動機の転回や声部間での交替などポリフォニックな声部の処理も注目される。
サラバンドの位置には2部形式のエールとその変奏である5つのドゥーブルが置かれる。ドゥーブル1から3ではエールの旋律線が16分音符で装飾され、また各声部は変奏ごとに声部進行を交替する。ドゥーブル4は8/12拍子での変奏、ドゥーブル5は旋律のリズム変奏である。なお本楽章は別の組曲HWV449の変奏曲形式楽章の改訂稿である。
終楽章のジグは1712年初演のオペラ《忠実な羊飼い》の序曲の鍵盤楽器用編曲の改訂稿である。本楽章のようにジグはプレストと記される場合もあった。所々に付点のリズムや声部の交替があるが、ほぼ全面にわたる8分音符の規則的なリズムや模倣の少なさから、全体的にイタリア様式への傾倒が強いといえる。
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