第2番 ヘ長調 HWV427
8曲中、唯一プレリュードを持たない。HWV431と並んで楽章構成は組曲ではなくクラヴィーア・ソナタのそれであり、イタリア、イギリスにおけるヘンデル初の3-4楽章構成のクラヴィーア・ソナタ集に先行する出版ソナタ作品ということになる。使用音域から、成立はハンブルクまたはイタリア時代とされるが、終楽章は1717-18年のキャノン城滞在時に書かれたもので、冒頭のアダージョも出版用の改訂稿である。また元々の第5楽章は出版時に削除された。
冒頭楽章はひたすら音階下行する低音の上で、上声が装飾豊かに旋律を紡いでいく。2回目の主調のカデンツ以降、ヘ短調を初めとして転調が続く。最後はE音上の7の和音に停止してから一呼吸おいて、イ短調のカデンツで楽章が閉じられる。
第2楽章は、上声部が分散和音で和音を補いながら16分音符で軽快に駆けるアレグロ楽章。後半部は冒頭主題の繰返しから始まる。下属調へ至ったところで主題から離れると、上声部は楽章の終わりまで休みない動きとなる。4小節の楽節の不完全な繰返しの中で更に転調が続き、明確な区切りなく、第27小節の後半から楽章前半部の第7小節後半以降が主調で回帰する。
第3楽章も装飾豊かな点では冒頭楽章と同じだが、後者は上声部が支配的に主旋律を担うのに対し、このアダージョでは4度跳躍に特徴づけられる動機が各声部に交替で現れる。
終楽章はフーガ。実質的にソナタ・ダ・キエザの構成をとる本作品で終楽章にフーガが来るのは伝統的な楽章配列に則っている。これは4声フーガで、主題の転調は三度関係の調にまで及ぶ(第20小節~、29小節~)。終盤では、バッハと比べヘンデルには少ないとされるストレッタも見られる。