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ラヴェル : ピアノ協奏曲 ト長調

Ravel, Maurice : Concerto pour piano et orchestre G-Dur

作品概要

楽曲ID:324
作曲年:1929年 
楽器編成:ピアノ協奏曲(管弦楽とピアノ) 
ジャンル:協奏曲
総演奏時間:23分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

総説 : 舘 亜里沙 (681 文字)

更新日:2015年6月12日
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1929年~1931年にかけて作曲され、1932年に初演されたこのピアノ協奏曲は、ラヴェルが完成させた音楽作品のうち、最後から2番目のものであり、同時に管弦楽を伴う作品としては最後のものとなった。ラヴェルは当初、自らがピアノ独奏を務めることを想定して作曲に取り掛かかったが、周囲の勧めもあって最終的には当時の代表的な女性ピアニストの一人マルグリット・ロンMarguerite Long(1874~1966)にピアノパートを託した。初演は1931年、パリのサン・プレイエルにて、ロンのピアノとラヴェル自身の指揮で行われた。翌年1932年も、中央ヨーロッパへの演奏旅行にロンを同伴させ、この協奏曲を披露している。

ト長調、全3楽章。ラヴェルが生涯かけて極め上げた、ピアノによる様々な技巧に加えて、打楽器による効果的な音響や管楽器によるキャッチーな旋律など、オーケストラ作品ならではの特色を備えている。旋律に陰影をもたらすブルーノートや、ピアノパートの緊張感を高める複調など、近代を象徴するような技法が際立つが、その一方で協奏曲の一番の醍醐味である、ピアノとオーケストラの明確な役割分担や掛け合いが楽しめる作品にもなっている。実際、この協奏曲が完成した1931年の7月、カルヴォコレッシMichel Dimitri Calvocoressi(1877~1944)が記事をまとめたインタビューによれば、ラヴェル自身はこの作品について「モーツァルトサン=サーンスの協奏曲の精神にのっとって作曲した」と語っており、作曲にあたって古典的な協奏曲に対する強い意識があったようだ。

執筆者: 舘 亜里沙

楽曲分析 : 舘 亜里沙 (1327 文字)

更新日:2015年6月12日
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第1楽章(明るく、楽しげに)

ト長調、2分の2拍子、ソナタ形式。冒頭でいきなり、ウィップの音とともに第1主題がピッコロで示され、ピアノパートの分散和音が始まる。この分散和音が、右手は主旋律に従ってト長調のカデンツになっているのに対し、左手はそこから半音下がった嬰へ長調と思しき和音になっており、緊張感を生み出す。第2主題はピアノの独奏から始まり、ジャズ風の管楽器のパッセージが印象的なものとなっている。展開部は楽章全体から見ると非常に短いが、ピアノが第1主題と第2主題の一部を打楽器風に演奏し、主導権を握っていく。再現部は展開部の延長線上で、ピアノによる打楽器的な音響によって第一主題が演奏される。第2主題の再現では、ピアノが先に第2主題の全貌を見せた後、オケが第2主題の後半を反復し、ハープや木管の短いカデンツァに続いてピアノの長いカデンツァとなる。このカデンツァは敢えて主題を用いておらず、右手の俊敏なトリルの下で左手が提示部の結尾の旋律を、分散和音とともにポリフォニックに演奏する形になっている。最後は再びピアノの打楽器的な音型の中から管楽器による第1主題が浮かび上がり、華やかに楽曲が締めくくられる。  

第2楽章(非常にゆっくりと)

ホ長調、4分の3拍子、三部形式。4分の3拍子でありながら、ピアノパートの左手は8分の6拍子を刻んでおり、周期の長い3拍子と短い3拍子が並行しているようにも聞こえる。始めはピアノが主題となる旋律を演奏し、それをオーケストラが追うという明確な構成を取っているが、中間部になるとやや形が崩れ、ピアノに即興的なパッセージが増えて調も不安定になる。再現部はコーラングレが主旋律を担当し、ピアノは美しい装飾を奏で続ける。  

第3楽章(急速に)

ト長調、4分の2拍子、トッカータ風の技巧的なピアノパートや即興的な管楽器のパッセージが鮮やかな終楽章である。楽曲を分節しているのは、楽章の幕開けにもなっている、長調のカデンツを歪めたような響きを持つ、鋭い和音と休符による楽節。ピアノパートは始め、完全5度による激しいアルペジオで、オーケストラパートに現れる即興的なパッセージを伴奏しているが、2回目にその「歪んだカデンツ」が登場すると、初めて第一主題と思しき三和音を平行させた旋律を奏でる。その主題はオーケストラにも伝播すると、ピアノは高音域を駆け上がり、再び「歪んだカデンツ」を奏でて次の主題の到来を告げる。第2主題は三連符を伴ったファンファーレのような旋律で、金管楽器が中心となって響かせる。ピアノもその第2主題を追いるが、また「歪んだカデンツ」が鳴ったのを機にオーケストラとは別の技巧的で複調的な独奏に入る。ピアノがいったん弾き止むと今度はオーケストラが低い音域から速く絶え間ない音型を奏で始め、そこに第1主題と第2主題が様々な楽器で浮かび上がってくる。やがてピアノパートとオーケストラは双方とも主題旋律を取るようになり、楽曲はいったんのクライマックスを迎える。そしてさらなる華やかな終止を準備するように、ピアノパートが再び複調的な独奏に入り、最後にはオーケストラをも巻き込み、盛大に「歪んだカデンツ」を鳴らして作品を締めくくる。

執筆者: 舘 亜里沙

楽章等 (3)

第1楽章

調:ト長調  総演奏時間:8分30秒 

第2楽章

調:ホ長調  総演奏時間:10分30秒 

第3楽章

調:ト長調  総演奏時間:4分00秒 

楽譜0

編曲0

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