この曲を演奏するためには特殊な技術が必要になります。力強い指と、連打ができる手首が必要になり、部分練習は欠かせません。ハチャトリアンの音楽は器楽の要素が強く、曲中むやみにテンポを変えるべきではなく、特別な指示がない限りは一貫して一定のテンポを保つ事が必要です。失敗例として発生する典型的な事例は、難易度の高い場所でテンポを落とし、難易度の低い場所でテンポを上げてしまう演奏です。果たしてトッカータと成りうるからには、それなりの技術を要します。
冒頭5小節目より既に左手の連打の地道な練習が必要な箇所になります。連打は練習していると徐々にできるようになるものです。決して諦めないようにします。1-39小節間でもう1つの難易度が高い場所は21-23小節間です。やはりテンポ通りの連打を要します。その他、この1-39小節間の注意はペダリングを含む、「音楽のわかりやすさ」が重要になります。むやみにペダルを多用することで、何の音がなっているのかわからず、すべての音が混ざってしまうような演奏を避けます。5-8小節間、ペダルを控えめに、またはこまめに変えます。9-12小節間、2拍につき1回のペダルにします。13-20小節間、ペダルはほぼ要りません。26-35小節間も同じでペダルは要りません。1-39小節間、テンポは1つにして、決して遅くしないようにします。
40小節目以降、左右の手で交互に単音の連打になります。クリアーに3連符が聴こえるようにします。ここからのセクション、細かなダイナミックマーキングは書かれていませんが、筆者の個人的な考えであれば、47小節目から60小節目を目指してクレッシェンドをかけていき、61小節目で一度ダイナミックレベルを落とします。67小節目から再びクレシェンドをかけ、71小節目にたどり着きます。73-75小節間、ペダルは全く要りません。以下、Bセクションまで同じなので省略します。
108小節目から始まるBセクションでは、これまでとは打って変わって、ロマン派的な歌の要素が必要な部分になります。111小節目、3拍目の右手と左手の音のクラッシュは、残酷な告白にショックを受けるような解釈です。さらっと弾かないようにします。このセクションはメロディーを優先して、自由にルバートをかけて構いません。114-117小節間、はっきり出す音は右手の親指の音のみにして、あとはppで弾きます。右手のメロディーで、115小節目、3-4拍間はレゾネンスです。大きくは弾きません。163-165小節間、非常にドラマティックなエンディングです。カデンツのように自由に弾きます。