多くの課題が要求される第1楽章です。この楽章で人を惹きつけるにはどうしたら良いでしょうか?
テンポ
まず、テンポからお話しします。この1楽章は4拍子ではありません。2拍子です。ですから2拍子を感じて演奏しなければならないのですが、多くの失敗例としては、この楽章をゆっくり弾きすぎてしまい、その結果多くの問題が発生してしまいます。Adagio Sosutenuto で2拍子です。では一体どのくらいのテンポで弾けば良いのでしょうか?ここからは筆者の考えや好みになります。
次に説明する「流れ」の問題で、4分音符=65位で演奏すれば、速すぎず、かつ流れを失わずして済みます。
ベートーヴェンの設定したAdagioというテンポ設定は、メトロノームを頼りにしているものではないことが証明できます。それは3楽章の188ー189小節間に付けられているAdagioのマーキングです。こちらの場合はさらに、4/4拍子ですから、4拍数えなければなりません。もしも、1楽章で設定したテンポがAdagioで、この場合、1小節2拍分のクリックになりますから、それを基に、これら3楽章の188ー189小節間を1小節4クリックで弾いてみると、如何にナンセンスであるかが解りますね。1楽章のAdagioと3楽章のAdagioでは全くテンポが異なることがわかります。
察するに、ベートーヴェンは、Adagioのマーキングを、単純に、「特に遅く」 という意味で書いていることがわかりますね。
流れ
筆者はこの楽章の最大に重要なポイントはこの「流れ」であると思っています。それは3連符を絶対に止(と)めない事に尽きます。この楽章の最後の2小節を除き、殆どの小節は1拍分以上の休符もなく、3連符で埋め尽くされています。最後の2小節を除き、実際に休符が書かれているのは。5小節目、9ー10小節間、29小節目、31小節目、66小節目の5カ所しかありません。そしてこれらの休符は、ほぼ、右手のメロディーラインの為の休符であります。
故に、3連符を止(と)めない事が大事なのですが、典型的な例として3連符が止まってしまう箇所があります。それは5小節目以降に書かれている、付点8分+16分 のリズムの部分です。このリズムが来ようが、3連符は絶対にタイミングを狂わしてはいけません。この箇所で、付点のリズムに惑わされ、必要以上に時間を取ってしまう学習者が多くいます。
32小節目以降、35ー36小節間をピークに、音楽はテンションを上げていきます。そして、41小節目までで一区切りとなりますが、この間も基本的に3連符を止めてはいけません。強いて言えば、35ー36小節間の最高音を弾くときに、若干、テンポを引っ張る程度です。
強弱
全体に、弱音器を付けたように という指示があるように、ppが基本的なダイナミックの楽章になります。この楽章ではpマーキングが最も大きい音量を示すマーキングになります。しかしながら、全く平坦な音楽になってはなりません。pやppの範囲内でコントロールをします。35ー36小節間もダイナミックマーキングは書かれておりませんが、筆者であれば、35ー36小節間は、mf辺りまでは持って行きたいところです。
バランス
メロディーラインと3連符がほぼ同じ音量、同じ音質で演奏する奏者は後を絶ちません。メロディーラインと3連符はハッキリと区別を付けます。一度メロディーラインのみ単旋律で弾いてみましょう。このようにゆっくりな曲になると、メロディーラインが把握出来ていない事も発生します。単旋律で弾いてみるときは、多少速いテンポで弾いてみましょう。