第6番 嬰ヘ短調 HWV 431
第2番と共にクラヴィーア・ソナタの体裁をとる。プレリュードを含むトリオ・ソナタ、また2つの緩徐な楽章にフーガとジグの急速な楽章が続くという構成はコレッリのソナタ作品に先例がある。本作品は1717~1718年までには完成し、元々のプレリュードHWV 570は1720年に新しいものと交換された。
プレリュードは、4声部の間の短い動機の掛け合いによって音楽が進んでいき、最後にアルペッジョによる明確なカデンツで楽章が閉じられる。基本的に動機を鳴らす以外の3声は和声変化に合わせて進行するのみで、同一音を長く引き延ばすことが多い。
ラルゴでは、最上声と他声部との応答と、一様な付点リズムの伴奏の上で、最上声が支配的に主旋律を紡ぐか、または最上声が他声部と共に付点リズムで和音進行する部分が交替する。楽章最後のカデンツは主調嬰ヘ短調の主和音ではなく属和音で、最上声は第3楽章のフーガの開始音となる。
アレグロのフーガの主題と対旋律は、楽章の最初から同時的に呈示され、複雑な対位法へと発展する。3、4声目の入りでは主題冒頭の動機が連続し、ストレッタになるかと思わせるが、ここでは厳密な模倣は続かない。より本格的なストレッタは楽章後半(第57小節~)に現れる。
2拍目のトリルを特徴とするジグの主題は1718年作曲の仮面劇《エイシスとガラテア》の合唱《Happy We》に由来する。主旋律は最上声が支配的だが、後半部では最低声との声部交換も頻繁になる。また両声部の平行3度の響きも、全体が2声体となるためにむき出しとなり、本楽章を特徴付けている。なお前半部の最後では嬰ト音まで上行した旋律が一様に下行してカデンツに至るのに対し、後半部では下行の後で再びイ音まで上がり、楽章末の音楽の収束を効果的にする音楽の高揚を生んでいる。