シューベルト : ピアノ・ソナタ 第14番 イ短調 D 784 Op.143
Schubert, Franz : Sonate für Klavier Nr.14 a-moll D 784 Op.143
作品概要
解説 (1)
執筆者 : 稲田 小絵子
(574 文字)
更新日:2007年5月1日
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執筆者 : 稲田 小絵子 (574 文字)
1823年2月、ピアノ・ソナタにおける長いブランクからようやく這い上がった作品である。前作は1819年のD664(ただし25年説もある)あるいは1817年の5曲にまで遡る。しかし、前年の1822年にはソナタ風の要素をもった《さすらい人》幻想曲を作曲し、ピアノ・ソナタ分野に自信がついたものとみられる。このイ短調ソナタは、その幻想曲のヴィルトゥオジティを受け継ぎつつ、内省的な深みをも追求した作品となった。
第1楽章:アレグロ・ジュスト、イ短調、4/4拍子。ソナタ形式。暗く不気味な主題で始まり、全体は、その上ろうとすれば下に引きずり込まれるような音型に支配されている。また、ユニゾンと厚い和音、長い音と付点リズム、跳躍進行と同音反復や順次進行といった対照的な要素が共存し、劇的な楽章を形成している。
第2楽章:アンダンテ、ヘ長調、4/4拍子。やさしい慰めの主題と高音の響きが、まるでベートーヴェンの後期作品のような印象を与える楽章である。前楽章とは対照的な、明るく上向きな主題に注目されたい。
第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ、イ短調、4/3拍子。ロンド・ソナタ形式。和音使いの巧みなシューベルトにしては珍しいカノン風の主題と、対照的に彼らしい優美な調和をみせる第2主題とが交互に現れるが、中間部では展開されており、結果的にソナタ風の形式を成している。
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