作品概要
解説 (2)
執筆者 : 平野 貴俊
(794 文字)
更新日:2015年6月9日
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執筆者 : 平野 貴俊 (794 文字)
1941年に作曲された教育用のピアノ作品。難易度は、アンリ・ルモワンヌ社から1946年に刊行された教育用曲集《子どもの花園》(デュティユー《田園詩》などを収める。オーリックの《フランスの踊り》も含まれる)よりもやや難しい程度である。各曲は、舞踊を中心とした古典的な様式にもとづいており、2ページにちょうど収まるよう書かれている。
第1曲〈目ざめ Réveil〉ニ長調、4分の2拍子による快活な音楽。末尾で調性が曖昧になる。
第2曲〈無言歌 Romance sans paroles〉変ロ長調、4分の4拍子。素直で伸びやかな旋律が歌われる。
第3曲〈ワルツ Valse〉ト長調、4分の3拍子。軽やかなワルツ。2度の転調を含む中間部は、サティの音楽を想起させる。
第4曲〈エグログ Églogue〉ハ長調、4分の4拍子。「エグログ」は、田園的な性格をもつ小品のジャンルのひとつ。刺繍のような音型による伴奏の上に、素朴な性格の旋律が重ねられる。
第5曲〈行進曲 Marche〉イ長調、4分の4拍子。滑稽でややぎこちない動きの行進曲。途中、4つのモティーフが順次現れ、転調が3度行われる。
第6曲〈シシリエンヌ Sicilienne〉変ロ短調、8分の6拍子。終始変わらない伴奏音型の上で、シャンソンを思わせる物憂げな旋律が歌われる。調の移ろいに工夫が凝らされている。
第7曲〈マズルカ Mazurka〉ヘ長調、4分の3拍子。スタッカートが目立つ冒頭ないし末尾とは異なり、中間部では滑らかな旋律が現れる。
第8曲〈子守歌 Berceuse〉変ホ長調、4分の2拍子。「明るく clair」と指示された高音域による中間部を経て、穏やかな冒頭のテーマが回帰する。
第9曲〈ポルカ Polka〉変イ長調、4分の2拍子。シャブリエの音楽を思わせる嬉々とした小品。ハ長調の中間部では、スタッカートとテヌートの対比を意識して弾く。
成立背景 : 平野 貴俊
(572 文字)
更新日:2015年6月9日
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成立背景 : 平野 貴俊 (572 文字)
1937年、オーリックを含む8人の作曲家[註:オーリック、マルセル・ドラノワ、ジャック・イベール、ミヨー、プーランク、アンリ・ソーゲ、フロラン・シュミット、ジェルメーヌ・タイユフェール]が、同年開催されるパリ万国博覧会のために、万博にちなんだピアノ曲を1曲ずつ書いた。こうして誕生した曲集《万博にて》は、博覧会の会場で、パリ音楽院の名教師マルグリット・ロンの弟子たちによって初演された。
本作品も《万博にて》と同じくロンに献呈されている。ロンは、弟子たちが同時代フランスの作曲家の音楽を採りあげることを重視していた。本曲集も、レッスンで使用することを前提として作られたのであろう。なお1956年には、ロンの音楽院着任50年を記念する式典で、オーリックらが共作した管弦楽曲《マルグリット・ロンへのオマージュ》が演奏されている。
当初、本曲集には10曲が収められる予定であった。10曲目は、イ長調による8分の12拍子で書かれたが、のちに除外されて現行の形となった。その際、タイトルは「中級の難易度による10の小品 petites pièces」から「中級の難易度による9の小品 pièces brèves」に変更されている。第10曲を含む全曲の自筆譜は、2009年12月8日にサザビーズのオークションで売却されているが、現時点での自筆譜の所有者は不明。
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