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パルムグレン :ピアノソナタ Op.11 ニ短調

Palmgren, Selim:Sonate d-moll Op.11

作品概要

作曲年:1901年 
出版年:1927年 
初出版社:Augener Ltd.
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:15分30秒

解説 (1)

解説 : 小川 至 (2393文字)

更新日:2018年7月24日
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パルムグレンが残した唯一のピアノソナタは1901年の初夏ごろにドイツで書かれた。これが書かれていた時、パルムグレンはドイツのヴァイマルにて、自身にとってのピアニストの理想像であったフェルッチョ・ブゾーニのマスタークラスに3か月の間参加していた。彼はこの時はコンサート・ピアニストを志しており、このソナタもそうした自身の演奏活動のために書かれたものと言えるだろう。1901125日、パルムグレンはこのソナタを演奏しているが、作品番号はまだなく、テンポ表記も印刷譜とは違うものであった(Maëstoso. Allegro moderato – Andante – Allegro deciso)。初演に立ち会った作曲家、カール・フロディンはその音楽を称えた上で、「様式は極めて現代的であり、グリーグ、チャイコフスキー、リスト、シューマンらの影響が明らかである」と指摘している。しかし出版はアメリカでの教師生活を終えてフィンランドに帰国した翌年の1927年であり、パルムグレンがもはやソロピアニストよりも歌曲伴奏者として、そして何より作曲家としての名声を得ていた頃であった。存命の作曲家にとってはその当時、新作ではなくこのように20年以上も前の作品が出版されるという事は極めて異例であった。

3楽章で構成されるこのソナタは、パルムグレンのピアノ独奏作品の中で最も規模の大きいものではあるが、その演奏時間は15分余りであり、ソナタとしては小振りである。しかし第1楽章に提示される第1主題はグランド・ソナタの名を冠しても遜色のない程の堂々たるもので、このソナタ全体の性格をも決定づける大きな存在感を放っている。交響的な響きを持ちながらも、洗練されたピアノ書法で記されたこのソナタは、当時の批評家をしてフィンランドのピアノ音楽の金字塔と評された。北の広く荒涼な大地を感じさせるような第1楽章、増三和音の響きが独自の幻想性を匂わせる静かな第2楽章を経て、グリーグ風の軽快なリズムに彩られた第3楽章に至り、同主調であるニ長調へと転調したのち、fffの表記と共に華やかに幕を下ろす。

 

余談ながら、パルムグレンは2つ目のピアノソナタも作曲しており、初演もヘルシンキにて19051213日の自身のコンサートで行われている。しかし批評家からは手厳しい酷評を受けてしまい、後年には楽譜も失われてしまった。しかし演奏会に同席していた作曲家、オスカル・メリカントはその新しさと独創性を高く評価していた事も付しておくべきだろう。

 

1楽章

ニ短調 ウン・ポコ・ソステヌート

ソナタ形式で書かれた第1楽章は、主音の力強いバスに支えられながら、2オクターブに渡る厚い和音による交響的な堂々たる第1主題によって開始される。移行部はこの主題に含まれる三連符を効果的に転用しながら、ピアニスティックな華々しいパッセージへと発展する。その後緊張が解けてゆくようなパッセージを経て、イ短調の第2主題に至る。tranquillamenteと示された厳かな第2主題も交響的な響きを保っており、左右の手に配分されたオクターブによって奏される。その後、息の長いクレッシェンドを伴いながら、半音階的な転調を繰り返し、再び第1主題を高らかに響かせて提示部を終える。

展開部は概して第1主題の展開に重きが置かれ、第2主題の展開によって再現部の移行部を成していると言えるだろう。非常に広い音域を覆うダイナミックな展開部はffから更なる高まりを見せ、この楽章におけるひとつの頂点を築き上げる。その後Più mossoの指示と共に、第2主題の旋律を素材とした移行部を経て、やがて再現部へと到達する。

再現部はほぼ提示部に忠実に進行してゆく。カデンツァを意識したような短い技巧的な移行部を経た後、第1主題を主としたコーダを重々しく轟かせて音楽は堂々と幕を下ろす。

 

2楽章

ヘ長調 ウン・ポコ・モデラート

概してロンド形式の形を取っているが、それぞれのセクションの扱いには若干の自由さが許されている。殊に増三和音の響きが顕著であり、これによりヘ長調という主調の性質を曖昧なものにさせている。繰り返される主部は、回を重ねるごとに分散和音の音数が増やされ、次第にピアニスティックなものとなってゆく。細かな転調を繰り返しながら中間部では嬰ト短調に安定し、主部のモティーフを用いた伴奏を伴いながら、合唱を模したような息の長い旋律が現れる。終結部では音楽はイ長調に至り、下降する左手を伴いながら徐々にテンポを緩め、安堵感に浸されるように音楽を閉じる。

 

3楽章

ニ短調 フィナーレ:モルト・アレグロ・コン・スピリト

ソナタ形式で書かれたこの楽章は、第2楽章の終止音であるA音を開始音とし、また同楽章の終結部の左手によるオクターブの下降音型を冒頭のテクスチュアの一部としており、明確に前後楽章の繋がりを意識したものとなっている。ニ短調のリズミカルな第1主題、ヘ長調の広々とした旋律を持つ第2主題が対比的に配置され、繰り返しを伴いながら提示部を終える。

展開部は変ロ短調から始まりこそするが、展開部全体を通して目まぐるしい転調を繰り返している。ここでは概して4つのセクションに分けられるが、その音楽的頂点は4つ目に現れる第2主題のパッセージにあると言えるだろう。しかしそれも長くは続かず、静かに潜行するような短い移行部を経て、再現部へ導かれる。

再現部は第1楽章同様、ほぼ提示部に忠実に進んでゆく。第1主題末尾の移行部では不意に現れる休止が効果的な役割を果たしているが、その後の第2主題の進行も提示部に即したものとなっている。続くコーダはppから始まるが、終わりに向かいながらクレッシェンドを繰り返し、主和音のアルペジオを伴いながら最終的にfffにまで至り、華々しく音楽を終える。

執筆者: 小川 至

楽章等 (3)

第1楽章

作曲年:1901  総演奏時間:6分30秒 

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第2楽章

作曲年:1901  総演奏時間:4分10秒 

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第3楽章

作曲年:1901  総演奏時間:4分50秒 

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