モーツァルトが完成させた唯一の2台のピアノのためのソナタである。作曲は1781年11月頃、ウィーンにおいてではないかとされている。父レオポルトに宛てた手紙によると、この作品は弟子と共演するために作曲されたらしい。全3楽章から成る。
第1楽章(アレグロ・コン・スピーリト)はソナタ形式で、4分の4拍子。提示部における第1主題は行進曲風の付点リズムを特徴とするフォルテのユニゾンで力強く始まる。これは当時の交響曲の典型的な身振りである。イ長調の第2主題はドルチェで第2ピアノが担うが、やがて第1ピアノも加わり短いカノンが形成される。
提示部がアルペッジョで結ばれた後、展開部では提示部の2主題と共通して下行→上行という同じ旋律型に基づく新たな主題が奏される。ここでは動機の半音階的な動きが不安げな情動を喚起する。また、第2主題に見られたカノン風の扱いが展開部冒頭でも見られる。激しいユニゾンや強まっていく掛け合いを経て再現部に移る。展開部の主題を使うという、モーツァルトの作品においては珍しい方法で最後を締めくくっている。
第2楽章(アンダンテ)はソナタ形式で、4分の3拍子の歌唱的な楽章。この楽章のみト長調である。第1ピアノと第2ピアノがそれぞれ役割を受け継いだり、役割を交換したりするなどといった変化を見せる。
第3楽章(モルト・アレグロ)はロンド形式で、4分の2拍子。ロンド主題は彼の作品でも有名な《トルコ行進曲》に似ている。調はイ短調、イ長調、ト長調、ニ短調など様々に移り変わり、主調へと戻っていく。最後は長いコーダで華やかに終わる。