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モーツァルト :ピアノ・ソナタ 第14番 K.457 ハ短調

Mozart, Wolfgang Amadeus:Sonate für Klavier Nr.14 c-moll K.457

作品概要

作曲年:1784年 
出版年:1785年 
初出版社:Artaria
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:18分00秒

解説 (1)

執筆者 : 岡田 安樹浩 (1668文字)

更新日:2009年12月1日
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1784年2月から、モーツァルトは自身の作品を管理するための作品目録を付け始めた。これは、演奏会や出版の際に作品をすぐに取り出せるようにするために、モーツァルトが自ら作成したもので、作品のタイトル、日付、楽器編成、そして大譜表のインチピットが書き記されている。

この目録によれば、ハ短調ソナタは1784年10月14日の日付をもっており、同時にアルタリア社から出版されたハ短調の『幻想曲』K.475は1785年5月20日の日付をもっている。

なお、長い間消失したと考えられていた自筆譜が、1990年に発見され、初版とは多くの点で音符の違いがあることが明らかとなっている。このことは、モーツァルトの自筆譜があくまで自身の演奏にためのものであり、特に緩叙楽章における細かな装飾等は、即興的に行われていたことを示唆している。

第1楽章 ハ短調 4分の4拍子 ソナタ形式

3オクターヴのユニゾンで主和音の分散和音を奏でる主要主題によって決然と開始される。半音階下行の内声進行をもつ経過句(第9小節~)を経て、平行長調の変ホ長調へと至り、旋回音型による装飾と、半音階的な変化音によって修飾された副次主題があらわれる(第23小節~)。続いて、上声部と低声部に対話風にあらわれるもう1つの副次主題があらわれる。半音階を多く含むパッセージと主要主題の動機による経過句となる。前半部分は、本来、副次主題の調性で閉じられるが、このソナタでは、主調の属9和音という開かれたままの状態となっている。

開かれた状態とされた前半の締めくくりは、一方では反復記号による冒頭への、他方では後半部分への接続を果たしている。後半部分(第75小節~)は、まずハ長調による主要主題で開始され、ヘ短調で最初の副次主題(第79小節~)と主要主題(第83小節~)があらわれる。そして主要主題が8分3連音符をともない、ト短調、ハ短調と転調し、前半の締めくくりと同様、属9和音へと至り、属7和音上に停止する。長いフェルマータが置かれた99小節目では、当時の演奏慣習としてアインガングを挿入することも可能であろう。

主要主題の再現(第100小節~)の後、最初の副次主題の再現は省略され、主要主題の動機が多声的に展開する(第118小節~)。そして2つ目の副次主題を主調で再現する(第131小節~)。さらに、主要主題によるコーダが用意されており(第168小節~)、最弱奏で楽章を閉じる。

第2楽章 変ホ長調 4分の4拍子

主題が回帰するたびに変奏されるという、モーツァルトのクラヴィーア楽曲に典型的な緩叙楽章である。そして、属調主題(第8小節~)は半音階的装飾音を多く含んでいる。

最初の主題回帰(第17小節~)に続いて、下属調の変イ長調であらたな楽想があらわれる(第24小節~)。急速な音階の上下行や分散和音などを経て、さらなる装飾が施されたかたちで主題が回帰する(第41小節~)。

第3楽章 ハ短調 4分の3拍子

ロンド主題は、Allegro assai(agitato)という急速なテンポの中、アウフタクトとタイによって結ばれたシンコペーション・リズムによって、1拍ずれたヘミオラのような旋律を、拍節通に刻まれる和音が支える。

属7和音の上に停止し、総休止によって緊張感を持続させた後にドッペル・ドミナントへ進行する件(第24小節~)は、19世紀のロマン派和声(例えばワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』のような)を先取りしているかのような緊張感をもっている。

平行長調の変ホ長調によるクープレ主題にも、半音階パッセージが認められる。そしてロンド主題の回帰(第103小節~)の後、クープレ主題が主調であらわれる(第167小節~)。

第221小節からのロンド主題回帰には、a piacereの指示をもった属7・属9和音を積み重ねる部分が挿入されている。こうした和声的緊張感の高まりは、モーツァルトの短調作品における特徴の1つといえるだろう。そしてコーダでは、音域を広範に拡大し、楽器のほぼ全音域を使用して楽曲を閉じる。

執筆者: 岡田 安樹浩

楽章等 (3)

第1楽章

総演奏時間:5分30秒 

第2楽章

総演奏時間:7分30秒 

第3楽章

総演奏時間:5分00秒