モーツァルト : 幻想曲(未完/補筆完成版) ニ短調 K.397 K6.385g
Mozart, Wolfgang Amadeus : Fantasie d-moll K.397 K6.385g
作品概要
解説 (3)
解説 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(222 文字)
更新日:2010年1月1日
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解説 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (222 文字)
「幻想曲 ニ短調」の作曲年は定かではないが、1782年頃に作曲されたと考えられている。曲は「幻想曲」というタイトル通り自由な形式で書かれ、冒頭の序奏のような役割を果たす分散和音の部分や、哀感に満ちた美しい主題など、霊感が遺憾なく発揮されている。しかしこの曲は未完で、現在演奏される形の最後10小節はモーツァルトの死後、他人の手によって補われた。その補筆は、作曲家でオルガニストのアウグスト・ミュラーによると言われているが、正確には判っていない。
総説 : 長井 進之介
(851 文字)
更新日:2018年3月12日
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総説 : 長井 進之介 (851 文字)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)は、3つの幻想曲(K. 396とK. 475、K. 397)を書いたが、ニ短調のK. 397(385g)は、自筆譜がなく未完ということもあり、最も謎に満ちた作品となっている。成立は1782年とされているが、詳細な時期や作曲の動機は不明である。
作曲者の死後、1804年に出版された初版譜には「導入部としての幻想曲、切り離した曲」という表記があり、第97小節、ニ長調の属七和音のフェルマータで終了している。その為、ハ短調のK. 475と同じように、ソナタやフーガなどの作品への序曲としての役割を持っていたと推測される。現在は1806年にブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された際に加えられた10小節の補筆部を演奏して終止させるのが慣例である。この補筆部の作者は不明だが、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番のカデンツァを書いたアウグスト・エバーハルト・ミュラー(1767-1817)だとする見方が多い。
形式は、大きく分ければ序奏的な役割を果たす「アンダンテ」、「アダージョ―プレスト」、そしてクライマックスを飾る「アレグロ」の3つの部分で構成されている。アンダンテは、両手で奏でる分散和音が即興的な雰囲気を漂わせながら、何かを求める様に彷徨っていく。和声は基本的に「I-IV-V」度の単純なものから構成されているが、楽節の終わりに挿入される借用和音が、闇の中に差し込む光のような効果を発揮する。
嘆きのアリエッタの様相を見せるアダージョは、半音階と休符が効果的に使用され、徐々に焦燥感を増していく。最後にはプレストに到達し、下行音型によるカデンツァとなる。
アダージョとプレストが繰り返されると、ニ長調のアレグレット部へと移行する。オペラの大団円を思わせるこの部分はそれまでの部分と全く違う表情を見せているが、音型に注目すると、アダージョ部分の音型を発展させたと捉えることも可能であり、自由な形式でありながらも、統一性のある作品となっている。
演奏のヒント : 大井 和郎
(615 文字)
更新日:2025年10月9日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (615 文字)
話すことは限りなくありますが、要注意点だけ述べておきます。楽譜に書かれてあるテンポ記号に関しては、この曲の場合、あまり忠実に守ることも無く、参考程度に留めておいた方が無難という事が言えるかも知れません。問題は12小節目から始まるAdagioにあります。ここを仮に、その奏者が考えるAdagioのテンポがあり、それを守って弾いたとしたとき、20小節目、23小節目以降も同じテンポで弾くことが出来るのかという問題に直面すると思います。
特に23小節目のように、agitato的なシーンで、あまりにも遅いテンポですとその雰囲気が伝わりません。これは「幻想曲」であるので、割と自由に弾いてしまって良いと思います。
12小節目のAdagioはあまり遅く弾いてしまうと、拍を刻む左手の8分音符が妙に硬く聞こえてしまいます。出来る事であれば、横に流れていきたい部分であり、それにはあまりテンポ設定を遅くせず、自然に聴こえる、Andante位のテンポの方が良いと感じます。Andante位に設定しておけば、20小節目も、23小節目以降も、不自然さは無くなります。
冒頭の、1〜11小節間のテンポもあまり遅くしすぎると、流れを失います。奏者が楽に感じるテンポを選んでみて下さい。
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