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スクリャービン : ワルツ 変イ長調 Op.38

Scriabin, Alexander : Waltz As-Dur Op.38

作品概要

楽曲ID:2583
作曲年:1903年 
出版年:1904年
初出版社:Belaïev
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ワルツ
総演奏時間:5分50秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

解説 : 山本 奈央 (443 文字)

更新日:2023年7月10日
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《ワルツ》作品38は1903年に作曲された。この時期には、《ピアノ・ソナタ第4番》作品30や、《悪魔的詩曲》作品36など一年のうちに13曲が作曲された時期であった。この頃より、神秘主義に傾倒していたスクリャービンは、「光(神)に向かって飛翔し、一体化(崇高の極みに達する)する」作品を多く作曲するようになり、後半にかけて大きくクレッシェンドをかけるダイナミクスや上行するパッセージ、飛翔のリズム(主に単音-重音による8分音符のアルペジオによるリズムがオクターブで鍵盤から離れて跳ねることを《ピアノ・ソナタ第4番》や法悦の詩のテキストにも飛翔という言葉でスクリャービン自身が書いており(筆者の訳による)、この言葉をリズムに当てはめたものを筆者は「飛翔」と説明する)などを多く使用するようになる。本作品は、ポリリズムを含んだ冒頭の主題から開始され、徐々にピアニスティックに展開される。後半から再現にかけてオクターブで上行、下行と広大さを増して、華々しく冒頭の主題が回帰する構成となっている。

執筆者: 山本 奈央

演奏のヒント : 山本 奈央 (476 文字)

更新日:2023年7月10日
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【演奏のヒント】

作品は右手四連符、左手4分音符のポリリズムから展開されるワルツです。左手の4分音符は、スラーによって繋がっていますので3つの音が一つのまとまりになるように、第2小節目からの真ん中の声部「C-B-Bes」もリズムを意識して強弱を付けてください。第25小節目からは少しずつ音楽が展開され、2回目の主題が装飾されて現れます。第76小節目の「brillante」からはオクターブをはっきり出しましょう。第88小節目の装飾音符は一番下の音がメロディーになりますので、1の指を使用し打鍵するとはっきりと聞こえます。第106小節目からは一変して「Piacevole,carezzandoー心地よく撫でるように」と緩やかな部分になりますので、メロディーの部分は歌うように弾いてください。第166小節目からはクライマックスに向かって音楽が大きくなりオクターブも増えていきます。腕を固くせず、次に向かう音のポジションを確認して持っていくように練習してみましょう。第241小節目は主要メロディーを回想するような部分ですので、PPのまま最後まで弾いてください。

執筆者: 山本 奈央