チャイコフスキー : 「四季」-12の性格的描写 11月「トロイカ」 Op.37bis ホ長調
Tchaikovsky, Pytr Il'ich : Les saisons - 12 Morceaux caracteristiques No.11 "Troika en traineaux" E-Dur
作品概要
解説 (2)
解説 : 山本 明尚
(317 文字)
更新日:2019年6月25日
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解説 : 山本 明尚 (317 文字)
遥かな道を眺めて憂うな
トロイカの後を追うな
胸の内の哀しい予感は
かき消してしまいなさい
エピグラフはネクラーソフの「トロイカ」(1846)より。
トロイカとは、三頭立ての馬車や馬橇のこと。
ホ長調の主要部分では、素朴で牧歌的な旋律が奏でられ、伴奏音型によって朗々たる雰囲気へと変わり、ト長調の中間部へと移る。装飾を伴う両手の跳躍音型は、馬橇が蹄を鳴らして走る音だろうか。高音部のスタッカートを交えて再現される主題は、まるで御者が橇を走らせながら歌っているように響く。
演奏のヒント : 大井 和郎
(1040 文字)
更新日:2018年3月12日
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演奏のヒント : 大井 和郎 (1040 文字)
11月「トロイカ」
この曲は技術的に大変難しい曲ですので、上級者向けであると思います。技術的というのは、単に音をしっかり掴むと言うことももちろんですが、幅広い強弱加減や、短いスタッカートで軽さを表現したり、バランスなど、音楽的な表現を十分に表す技術という意味合いもあります。
そしてこの曲に必要で重要な要素は即興性です。奏者はまず、どこが拍の頭であるか等、4分の4拍子のリズムをわかっていなければなりませんが、その後、自由にテンポを変えて即興的に弾かなければなりません。
例えば9小節目から始まるメロディーラインは、1小節目の素材が変化したものに過ぎませんが、それまでのリズム感がここ9小節目から失われていますね。12小節目と、16-17小節目を除いては、この9-17小節間、即興性が必要になります。そこで参考にしたいのが、彼のピアノコンチェルト1番の第1楽章です。このコンチェルトのカデンツはまさにこの9小節目以降と雰囲気が似ています。まだ聴いたことのない学習者は是非聴いてみてください。
よって9-17小節間、オーケストラが休み、ソリストが自由にカデンツを演奏しているように弾きます。メロディーラインはespressでたっぷり歌ってください。
13-22小節間は少しgrandioso的に、テンポをゆっくり目に取ると良いでしょう。
Bセクションは23小節目から始まります。さてこのセクションは45小節目まで続きますが、やはりこのセクションも即興性が求められます。そして決して重くならないように弾いてください。このセクションは、先ほどのコンチェルト1番の第2楽章が参考になるかもしれません。この第2楽章の速いセクションがこの部分と雰囲気的には似ています。
再び戻って来るAセクションは、走り始めたトロイカを思わせる、連続する16分音符によって表現されます。44-45小節でdiminuendoをかけたら、16分音符をppに落として46小節目のAに入ってください。そしてそのまま、ppを保ってください。メロディーラインはゆえに、左手に登場します。そして再び、多くの16分音符が入ってきているにもかかわらず、54ー62小節間、即興的に演奏してください。
よくこの曲の最後をゆっくりして終わる奏者がいます。楽譜をごらんください。ritマーキングはありません。この曲はテンポを緩めず終わります。つまりは、「トロイカは遠ざかって視界から消えていく」だけであって、「ソリ自体の速度」を落としてはいけません。
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