作品概要
作曲年:1908年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:13分30秒
著作権:パブリック・ドメイン
原曲・関連曲: ラヴェル 《マ・メール・ロワ(バレエ版)》
解説 (1)
解説 : 白石 悠里子
(1675 文字)
更新日:2019年3月4日
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解説 : 白石 悠里子 (1675 文字)
ラヴェル 《マ・メール・ロワ》ピアノ独奏版
ジャック・シャルロ編
総説:
ラヴェルが1908−10年に作曲した4手ピアノ版に基づいて、ジャック・シャルロJacques Charlot中尉(18??-1915)が編曲した本作品は1910年に出版された。シャルロは出版者ジャック・デュランの甥にあたり、ラヴェルやドビュッシーと親交があったが、第一次大戦で没した人物である。のちにラヴェルは《クープランの墓》の〈前奏曲〉を、ドビュッシーは《白と黒で》の第2曲を彼に捧げている。原曲の4手パートはほぼ忠実に2手に移行されている。したがって、子どものために比較的簡潔に書かれた原曲に対して、この編曲は随所で高度なテクニックが要求される。
第1曲 〈眠りの森の美女のパヴァーヌ〉
遅く、イ短調(エオリア旋法)、4分の4拍子。
冒頭主題は4小節ずつの前楽節と後楽節で構成される。シンプルな前楽節(第1-第4小節)に対し、内声が加わる後楽節(第5-第8小節)では、ppの雰囲気を保つことに留意する必要がある。推移部(第9-第12小節)を経て冒頭の主旋律が回帰するが、前楽節(第13-第16小節)では声部が増えて厚みが増す。対して、後楽節(第17-第20小節)は第5-第8小節の再現である。
第2曲 〈親指小僧〉
極めて中庸に、ハ短調、4分の2拍子。
第1部(第1-第50小節)は前奏ののち、右手の主旋律が左手の三度平行和音を伴って奏される。第2部(第51-第60小節)では右手でppの鳥のさえずりが描写される。他の声部はそのさえずりを妨げないように注意されたい。第3部(第61-第79小節)は第1部の再現である。第67-第70小節の左手は、音域の広い和音を掴めるような柔軟さが求められるだろう。
第3曲 〈女王の陶器人形レドロネット/パゴダの女王レドロネット〉
行進曲の速さで、嬰ヘ長調、4分の2拍子。
三部形式として捉えられるが、前の部分の終わりと次の部分の始まりが重ねられているため、各部分の境界はぼかされている。第1部(第1-第65小節)では8小節の導入に続いて、五音音階(嬰へ−嬰ト−嬰イー嬰ハ−嬰二)による軽やかな主旋律が右手で奏される。第55小節でのグリッサンドのあとのコデッタでは次第に緊張が高まっていく。第1部の最後と同時に始められる第2部(第65-第138小節)は、第1部の主題とは対照的なゆったりした新主題が用いられる。第3部(第138-第196小節)は、第2部のゆったりした動きを継続する左手に対して、冒頭主題が右手に回帰する形で始まる。第153小節以降は左手も第1部の活発なリズムを取り戻し、華々しく終わる。
第4曲 〈美女と野獣の対話〉
極めて中庸なワルツの速さで、へ長調、4分の3拍子。
三部形式。第1部(第1-第48小節)はワルツのリズムに乗って穏やかな美女の主題が奏される。サティの《ジムノペディ》へのオマージュと言われる所以がもっともよく感じられる部分である。第2部(第49-第105小節)は、左手に野獣の主題が現れ、次第に緊張が高まる。第3部+コーダ(第106-第171小節)は第1部と第2部を総合した構成である。右手に美女の主題、左手に野獣の主題という2つの主題の重奏で開始され、野獣が倒れるクライマックスが訪れる。1小節の全休止ののち、野獣から王子への変身を描くグリッサンドを挟んで第147小節からコーダへと入るが、ここでは音域が拡大しているために決して演奏は容易くない。
第5曲 〈妖精の園〉
遅く厳かに、ハ長調、4分の3拍子。
冒頭(第1-第22小節)では夜明けとともに王子が登場して王女を見つけるまでが、徐々に上行する音で表される。続く両手のアルペッジョで始まる部分(第23-第50小節)は王女の目覚めの場面と人々が集う場面が描かれ、大団円に向けて緊張が高まっていく。仙女が王子と王女を祝福する最後の部分(第51-第55小節)は、グリッサンドによって堂々と煌びやかに描写されるが、ピアノ独奏では指使いやペダリングにおいて工夫が必要になる箇所である。
編曲・関連曲(2) <表示する>
作・編曲者等不詳: バレエ組曲「マ・メール・ロワ」 前奏曲 - 第1場 紡車の踊りと情景
総演奏時間:6分00秒
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