作品概要
作曲年:1888年
出版年:1891年
初出版社:Durand & Schoenewerk
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:7分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (2)
解説 : 白石 悠里子
(2254 文字)
更新日:2019年11月6日
[開く]
解説 : 白石 悠里子 (2254 文字)
概説
1890年ごろを境に、それまで歌曲を多く書いていたドビュッシーは、ピアノ小品の出版に精を出すようになった。1888年ごろに作曲され、1891年に出版された《2つのアラベスク》はその頃の作品の一つである。標題の“アラベスク”とは、一般的にアラビア風の工芸や建築装飾における唐草模様や幾何学模様を指すが、ドビュッシーはこの言葉をとりわけバッハの音楽と結びつけ、「芸術のあらゆる様態(モード)の根底である“装飾”のあの原理」[1]と言い換えている。しかし、アラベスクの概念と実際の楽曲との関連性については、旋律、和声、リズムと様々な観点からの解釈の余地があり、容易に特定できるものではない[2]。他方、2曲の《アラベスク》に見られる繰り返しながら発展していく旋律モチーフや、生き生きと躍動するリズムは、この作曲家ののちのピアノ曲にも共通する特徴を確かに提示している。
各曲の解説
第1番
ホ長調、4分の4拍子、アンダンティーノ・コン・モート。全体は3部形式で捉えられる。第1部(第1-38小節)は、4つのセクションから成っている。第1セクション(第1-5小節)では、2小節の三連符の旋律を経て、第3小節から上声と下声が加わり、第5-6小節の旋律に「A−G(is)−F(is)−E」【譜例1】という、この楽曲をまとめる主要モチーフが登場する。左手のアルペッジョに乗せて自在に紡ぎ出される旋律による第2セクション(第6-16小節)に続いて、第3セクション(第17-18小節)では主要モチーフが回帰し、その後はまた自由に歌われる第4セクション(第19-38小節)へ引き継がれて完全終止(V-I)する。第2部(第39-70小節)はイ長調に転調して、8小節主題がややゆったりとした動きとともに提示される(第39-46小節)。その冒頭2小節の内声には「A−G−F(−E)」モチーフが用いられており、楽曲の一貫性を見出すことができるだろう(第39-40小節)【譜例2】。この8小節主題は経過句(第47-55小節)ののち再提示され(第55-62小節)、ハ長調とfで決然ともう一度提示されて主調へ回帰する(第63-70小節)。第3部(第71-107小節)は、冒頭2小節の上声部に主要モチーフが付加されるものの、基本的には第1部の第1セクションから第3セクションが再現される(第71-88小節)。第89小節以降は、四声による下降の経過句(第89-94小節)からコーダへ入る。3連符による装飾を伴いながら「A−G(is)−F(is)−E」のモチーフが鳴らされ(第95-99小節)【譜例3】、第1部の第2セクションが回想され、軽やかに閉じられる(第100-107小節)。
【譜例1】アラベスク第1番 第5-6小節[1]
【譜例2】アラベスク第1番 第39-40小節
【譜例3】アラベスク第1番 第95-99小節
第2番
ト長調、4分の4拍子、アレグレット・スケルツァンド。全体の形式は図に示すような3部形式で捉えられる【図1】。第1部(第1-37小節)では、静かで軽やかな4小節の序奏に続いて、3種類のセクションが登場する。AとA’セクション(第1-14小節)では、序奏に由来する右手のパッセージが滑稽さを表現し、Bセクション(第15-27小節)では、軽やかさは保ちつつも、より長いフレージングが求められる。そして、フレーズの頭に強いアクセントを持つCセクション(第28-37小節)が第1部の最後を盛り上げる。第2部では、スタッカートと上行音型で特徴付けられるNaとNbという2種のセクションの交替で曲の疾走感が増す(第38-57小節)。しかし、最後には序奏のモチーフが再出現し、次のセクションへの準備が整えられる(第58-61小節)。第3部(第62-最後)は、AとA’セクションの再現(第62-71小節)で開始する。ハ長調に転調してBセクションが現れたのち(第72-81小節)、AセクションとBセクションのどちらの発展形とも取れる優しく穏やかで幻想的な雰囲気へと変容し、楽曲に新たな展開が生まれる(第82-89小節)。第90小節からは元のテンポに戻り、第2部のNbセクションが差し込まれる。このセクションは自然と緊張感を高め、溌剌としたCセクションに違和感なく接合して楽曲は締めくくられる。
【図1】
[1] クロード・ドビュッシー 1996『ドビュッシー音楽論集』平島正郎訳、東京:岩波書店、69頁。
[2] Bhogal, Gurminder Kaur. 2013. Details of Consequence: Ornament, Music, and Art in Paris. Oxford: Oxford University Press, pp.165-67.
[1] 本解説で引用した楽譜は以下である。
Claude Debussy. 1904. 1ère Arabesque, Paris: Durand, D. & F. 4395, accessed 2 November 2019, International Scores Music Library Project, http://conquest.imslp.info/files/imglnks/usimg/e/ef/IMSLP255353-PMLP02383-Debussy,_Claude-Deux_Arabesques_Durand_4395_scan.pdf.
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部
(209 文字)
更新日:2010年1月1日
[開く]
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (209 文字)
習作を除けばドビュッシー最初のピアノ曲で、1888に作曲されたと推定される。そこには既にドビュッシー独特の音楽の予感が感じられるが、まだロマン派の影響も残っている。‘アラベスク’とはアラビア風とか唐草模様を意味する言葉で、この曲もどこか視覚的なイメージを秘めている。3連符を多用したアルペジオ、和声の繊細な使用など、演奏平易な小品の割に個性的な部分が多く、若きドビュッシーの並々ならぬ作曲技量が窺い知れる小品でもある。
編曲・関連曲(3) <表示する>
ピティナ&提携チャンネル動画(16件) 続きをみる
楽譜続きをみる
楽譜一覧 (77)

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

(株)ドレミ楽譜出版社

(株)音楽之友社

(株)全音楽譜出版社

(株)音楽之友社

(株)全音楽譜出版社

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

(株)音楽之友社

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

ハンナ(ショパン)

ミュージックランド

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

ミュージックランド

(株)リットーミュージック

ミュージックランド

ミュージックランド

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

(株)ドレミ楽譜出版社

(株)学研プラス

ミュージックランド

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

(株)オンキョウパブリッシュ〇

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

(株)ドレミ楽譜出版社

(株)ドレミ楽譜出版社

ミュージックランド

ミュージックランド

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

ミュージックランド

(株)全音楽譜出版社

ハンナ(ショパン)

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

ハンナ(ショパン)

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

(株)ドレミ楽譜出版社

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

ハンナ(ショパン)

ハンナ(ショパン)

ハンナ(ショパン)

ハンナ(ショパン)

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

ミュージックランド

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

ミュージックランド

(株)全音楽譜出版社

ミュージックランド

(株)全音楽譜出版社

(株)全音楽譜出版社

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

ミュージックランド

ミュージックランド

(株)シンコーミュージックエンタテイメント

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

KMP(ケイ・エム・ピー) ケイエムピー

(株)東音企画(バスティン)

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

(株)ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス

(株)学研プラス

Neil A. Kjos Music Company

Neil A. Kjos Music Company

Peters

Peters

(株)全音楽譜出版社