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ドビュッシー : 2つのアラベスク 第1番 ホ長調

Debussy, Claude Achille : 2 Arabesques Première arabesque E-Dur

作品概要

楽曲ID:22362
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:4分00秒
著作権:パブリック・ドメイン

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:発展1 発展2 発展3 発展4

楽譜情報:64件
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解説 (2)

解説 : 白石 悠里子 (1083 文字)

更新日:2019年11月6日
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ホ長調、4分の4拍子、アンダンティーノ・コン・モート。全体は3部形式で捉えられる。第1部(第1-38小節)は、4つのセクションから成っている。第1セクション(第1-5小節)では、2小節の三連符の旋律を経て、第3小節から上声と下声が加わり、第5-6小節の旋律に「A−G(is)−F(is)−E」【譜例1】という、この楽曲をまとめる主要モチーフが登場する。左手のアルペッジョに乗せて自在に紡ぎ出される旋律による第2セクション(第6-16小節)に続いて、第3セクション(第17-18小節)では主要モチーフが回帰し、その後はまた自由に歌われる第4セクション(第19-38小節)へ引き継がれて完全終止(V-I)する。第2部(第39-70小節)はイ長調に転調して、8小節主題がややゆったりとした動きとともに提示される(第39-46小節)。その冒頭2小節の内声には「A−G−F(−E)」モチーフが用いられており、楽曲の一貫性を見出すことができるだろう(第39-40小節)【譜例2】。この8小節主題は経過句(第47-55小節)ののち再提示され(第55-62小節)、ハ長調とfで決然ともう一度提示されて主調へ回帰する(第63-70小節)。第3部(第71-107小節)は、冒頭2小節の上声部に主要モチーフが付加されるものの、基本的には第1部の第1セクションから第3セクションが再現される(第71-88小節)。第89小節以降は、四声による下降の経過句(第89-94小節)からコーダへ入る。3連符による装飾を伴いながら「A−G(is)−F(is)−E」のモチーフが鳴らされ(第95-99小節)【譜例3】、第1部の第2セクションが回想され、軽やかに閉じられる(第100-107小節)。

 

【譜例1】アラベスク第1番 第5-6小節[1]

【譜例2】アラベスク第1番 第39-40小節

【譜例3】アラベスク第1番 第95-99小節


[1] 本解説で引用した楽譜は以下である。
Claude Debussy. 1904. 1ère Arabesque, Paris: Durand, D. & F. 4395, accessed 2 November 2019, International Scores Music Library Project, http://conquest.imslp.info/files/imglnks/usimg/e/ef/IMSLP255353-PMLP02383-Debussy,_Claude-Deux_Arabesques_Durand_4395_scan.pdf. 

執筆者: 白石 悠里子

演奏のヒント : 大井 和郎 (1097 文字)

更新日:2021年8月4日
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まず最初に、フランス音楽というものを知っておかなければなりません。この曲はわりとフランス音楽の初心者に与えられますので、手軽に弾くことができますが、その前にフランス音楽のについてお勉強をしておきましょう。  

フランス音楽の特徴としては、水彩画をイメージすることにあります。心理的描写ではなく絵画的描写になります。それも線がはっきりとしている絵画ではなく、水彩画のようにぼやけた感じのラインを考えます。そしてそれは音楽にどのような影響をもたらすかというと、基本的にタッチは激しいマルカート的なタッチではなく、甘美に満ちた柔らかなタッチであり、ペダルを小まめに変えてクリーンな音響を作るのではなく、必要以上にペダルを変えずに、多少の濁りよりもバスを優先し、層の厚い響きを作るとお考えください。  

冒頭から3連符が出てきますが、これらの3連符、決してマシンガンのようにマルカートにならず、柔らかなタッチで全く力を入れずに弾くようにします。そしてペダルは常に使います。基本的に1つの和音に対して1つのペダルと考えます。1ー2小節間、ペダルは、2拍ずつ、和音が変わる度に踏み換えます。3ー4小節間も同じです。5小節目、1つの和音が1小節間にありますので、ここは。一番下の音であるHをペダルで残したまま、踏み続けます。ritがありますので少しテンポは遅くなりますが、5小節目は濁りが生じてそれがあまりにも耐えられない場合のみペダルを換えます。少なくとも1ー3拍間はペダルを踏み続けます。4拍目に入ったとき、状況に応じてペダルを換えても構いません。  

またこの手の音楽はルバートを多く用います。決して古典音楽のようにメトロノームのように正確な音楽に近づけないことです。例えば6-7小節間、このフレーズのゴールの音は7小節目の右手、Disですので、そこに向かって一気に3連符を弾いてしまいます。6小節目、2拍目からの3連符が始まったら、音楽を前に前に進めるようにして、7小節目の2拍目のDisまで止まらないようにします。Disにたどり着いたら今度は音楽を後ろに引っ張り、テンポを緩めます。  

26ー27小節間、26小節目1拍目の左手、バスのAはペダルで2小節間残し続けます。ペダルを踏みっぱなしにしますと内声の3連符に多少の濁りが生じます。しかしそのくらいの濁りであればフランス音楽は問題ありません。むしろペダルを換えることによって失われるバスの方が損失は大きいです。  

41小節目、多くの奏者が2拍目でペダルを換えてしまいますが、これは1拍目のバスであるEを残しておきたいので、ペダルは1小節間換えません。

執筆者: 大井 和郎

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