1888年~89年、4手ピアノのために作曲された。ドビュッシーの作曲初期の作品にあたる。声楽曲のジャンルにおいては、早い段階から個性をみせていたドビュッシーであったが、同時期のピアノ作品においては、まだ伝統的な枠からぬけだせてはいるとはいえない。
しかしながら、この《小組曲》では、のちの革新への第一歩を感じさせるような要素が随所にみられる。
魅力的な旋律やリズムをもち、難易度としても取り組みやすいものとなっているため、ドビュッシーの連弾曲の中でも特に広く親しまれている。
《小組曲》は、18世紀、ロココの画家ワトーが、好んで描いた貴族の優雅な宴「艶なる宴」と深い関係をもっている。よって、この曲の演奏に際しては、そのような優雅で繊細、軽妙洒脱な雰囲気を大切にしたい。
以下の4曲からなり、いずれも複合3部形式で、対照的な性格の中間部をもつ。
第1曲:小舟にて
ヴェルレーヌ(フランスの著名な詩人)の詩集『艶なる宴』にある詩と同じタイトルをもっている。波のような分散和音の上を旋律が優雅に、そしてゆるやかに流れていく。
管弦楽的な色彩感を意識して奏する。
第2曲:行列
第1曲と同様に、ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』にある詩と同じタイトルをもっている。詩の内容は、貴婦人のロングドレスの裾をかかげて行進するおつき人や、ペットのいたずらな猿の様子を描写したものである。軽快で楽しい雰囲気をもった曲。
第3曲:メヌエット
この曲には、ドビュッシーがバンヴィル(フランスの著名な詩人)の詩を用いて作曲した歌曲《艶なる宴(1882)》の旋律がとりこまれている。ゆっくりとしたテンポの、優雅な舞曲。
第4曲:バレエ
後うちのリズムによって、テンポが切迫することが多いので、休符をしっかりと意識する必要がある。管弦楽的な色彩に満ちた華やかな曲。
《小組曲》は、管弦楽用や、ピアノ独奏のための編曲、ほかにもさまざまな楽器のための編曲がある。