作品概要
作曲年:1860年
出版年:1860年
楽器編成:ピアノ独奏曲
ジャンル:リダクション/アレンジメント
総演奏時間:16分25秒
著作権:パブリック・ドメイン
解説 (1)
総説 : 長井 進之介
(1025 文字)
更新日:2018年3月12日
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総説 : 長井 進之介 (1025 文字)
第1曲 乙女の願い LW. A193(S. 480, R. 145)
リストはオペラのトランスクリプションと共に、シューベルトをはじめとする先人や、シューマンやショパンといった同時代の作曲家の歌曲編曲も積極的に行っていた。
ショパンの全19曲の歌曲の中からは6曲を編曲し、1860年に「6つのポーランドの歌」として出版した。原曲となったショパンの歌曲は、その全てがごく私的な創作として書かれたもので、聴衆に公開されるということは作曲者の存命中にはなく、献呈もされていなかった。ショパンの死後に草稿が発見され、友人であったユリアン・フォンタナ(1810-1869)によって1857年に出版されている。リストはショパンの6つの歌曲の創作を1857年に開始している為、歌曲が出版されてすぐに編曲に取り掛かったことになる。
ショパンの歌曲は、創作時期と同様、選ばれた詩の内容も多岐に亘るが、どの曲にもマズルカやポロネーズのリズムや民謡の旋律が積極的に使用されており、彼の祖国への想いが強く反映された作品群の一つであるといえよう。「乙女の願い」は、ショパンが1829年に書いた最初の歌曲だが、原曲のタイトルは「願いŻyczenie」である。「もしも私が太陽ならばあなただけを照らせるし、小鳥ならばあなたのためだけに歌えるのに」という、愛しい存在への純粋な愛情がマズルカのリズムに乗せて歌われていく。なお、作詞のステファン・ヴィトヴィツキ(1801-1847)はショパンの友人で、ショパンの歌曲のほとんどは彼の詩に付けられたものである。
リストはこの作品のピアノ独奏編曲にあたって、徐々に力強さを増していく変奏曲に作品を再構成した。この編曲によって、少女の無邪気だが情熱に溢れた想いを強調することに成功したと言えるだろう。もともと8小節であったものを26小節に拡大した前奏の後、装飾を加えながらも原曲をほぼそのままピアノ・ソロに移し替えた旋律が主題として奏され、そのあとに3つの変奏が続いていく。第1変奏は舞曲の要素を強調した軽やかな性格。第2変奏は右手の3連符によるフィギュレーションが特徴的で、ショパンの練習曲作品25-2を想起させる技巧的な変奏である。第3変奏は、オクターヴや分厚い和音の使用によって最も劇的な変奏となっている。更に第1、第2変奏の要素の融合や八分音符と三連符によるポリ・リズムも取り入れられ、揺れ動く感情とその爆発が効果的に描き出されていく。
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