スクリャービン :詩曲「焔に向かって」 Op.72
Scriabin, Alexander:Vers la flamme Op.72
執筆者 : ピティナ・ピアノ曲事典編集部 (210文字)
スクリャービンが独自の音楽語法を確立した、晩年の作品の一つ。ほかにも詩曲を多く創作しているが、その中でもこれは標題が付けられ、調性や既存の形式によっていない。
火や焔のモティーフは、神秘主義的哲学に傾倒していたスクリャービンの作品にたびたび登場する。自由で法悦的世界が開けていくこの響きは先進的であり、この作品においても重音の連打によって恍惚の境地に向かっていく。同時に、暗闇の底のような彼の観念的世界も色濃く表れている。
詩曲「焔に向かって」