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グリーグ :抒情小品集 第5集 Op.54

Grieg, Edvard Hagerup:Lyriske smastykker No.5 Op.54

作品概要

作曲年:1891年 
出版年:1891年 
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:曲集・小品集
総演奏時間:23分00秒

解説 (2)

執筆者 : 和田 真由子 (1883文字)

更新日:2007年10月1日
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1867年、《ピアノ協奏曲イ短調 作品16》で一躍有名になったグリーグは、この年から1901年にかけてこの作品集を書き上げた。生涯にわたって作曲されているため、グリーグの作風、ピアニズム、その変遷すべてがその中にあらわれており、グリーグの作品の中でも中心的な存在にある。

いずれも1分~6分程度のかるめの小品であり、ステージ用というよりは、主にサロンや家庭で広く親しまれていた。いずれの曲も、標題がつけられており、それぞれの曲に対して、一つの感情、気分、情景が表現されている。

1867年、第1集を発表したが、その後ピアノ、作曲、指揮など多忙だったこともあり、第2集が発表されたのは、その16年後であった。第2集から第10集はある一定の間隔をおきながら続けて作曲された。全10巻で、計66曲の作品がおさめられている。

グリーグ : 抒情小品集 第5集 / Lyriske smastykker No.5 op.54

1891年に出版されたこの第5集は、これら抒情小品集の中でも最高峰に位置づけられる完成度を誇っており、当時出版にあたっても、大成功をおさめた作品集である。また、他の作品集と比べ、ノルウェーの民族的な性格が色濃いものになっており、その音楽語法にも更なる磨きがかかっている。

また、1903年、グリーグは、この〈ノルウェーの農民行進曲〉、〈小人の行進〉、〈夜想曲〉、〈鐘の音〉を管弦楽用に編曲した。しかし、この編曲は、グリーグの意図に反して、満足のいくものではなかった。のちに、〈鐘の音〉を〈羊飼いの少年〉と入れ替え、これらを《抒情組曲》とした。これも、グリーグのオーケストレーションの才能が見事に発揮された、傑作のひとつであろう。

1.羊飼いの少年 / op.54-1 "Gjaetergutt":導入部から笛の音のような旋律が何度も反復し、物哀しく響き渡る。中間部は速度をややはやめ、半音階的な下降をきかせながら徐々に浮上し、和声的な広がりをみせる。ffまでもりあがりをみせたのち再びppまで続く。最後の和音の研ぎ澄まされた響きに至るまで、まさに自然を絵にかいたような美しさである。

2.ノルウェーの農民行進曲 / op.54-2 "Gangar":ガンガルとは「歩き踊り」を意味し、絶え間なく歩きつづけるような速度とリズムが特徴である。人気のある曲。pppからfffまでのダイナミックレンジがあり、それらを考慮にいれて計算し、効果的に演奏したい。高音では、粒のたつ輝くような音、オクターブを多用する部分では、響きのある豊かな音、など、ダイナミックにあわせて音色の変化も楽しめる。

3.小人の行進(妖精トロルの行進) / op.54-3 "Trolltog":グリーグの《抒情小品集》の中でも、特に人気の高い代表作であり、近年でもコンサートのアンコールピースとして広く愛奏されている。冒頭からスタッカートで軽やかに奏される怪しげな主題にはじまり、ひっかくように奏される32分音符は、聴く人々の興奮をあおるだろう。中間部は雰囲気が一変する。愛情と輝きに満ち、自由で時にいたずらっぽさもみせるこの中間部もまた非常に魅力的で、前後との対比が非常に効果的である。

4.ノクターン / op.54-4 "Notturno":この曲も、グリーグの人気を更に高めることになった有名な作品の一つである。左手の伴奏は、タイによって拍節感があいまいになっているが、曲に推進力を与えているのはこの左手である。メロディは立体的であり、非常に繊細な耳と、空間を感じるバランス感覚を要する。鳥の鳴き声を模した中間部は、曲の穏やかさに輝きを与えている。

5.スケルツォ / op.54-5 "Scherzo":技巧的で、起伏に富んだ和声や旋律が非常に魅力的な作品。めまぐるしい様子でかけまわる、おどけた雰囲気の主部に対し、中間部は装飾音が付された穏やかで優しい旋律が愛らしく歌われる。高音域で、グリーグらしい音のきらめきをもって奏される旋律は、どこか物哀しく、それでいて美しい。

6.鐘の音 / op.54-6 "Klokkeklang":グリーグの作品の中で特異な性格をしめしている。印象派的であり、また、そのデュナーミクの使い方も、実験的である。冒頭から異なる大きさの鐘の音がきこえてくるようで、一つはリズムをきざみ、もう一つは旋律をうけもっている。音量は非常に長い間おさえられており、pppからfffにわたるダイナミックレンジをもつ。豊かな音色をつくるためにも、打鍵する際の体の使い方が問われる。

執筆者: 和田 真由子

演奏のヒント : 大井 和郎 (899文字)

更新日:2018年3月12日
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楽章等 (6)

羊飼いの少年 Op.54-1

総演奏時間:4分30秒 

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ノルウェーの農民行進曲 Op.54-2

総演奏時間:3分00秒 

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ノクターン Op.54-4

総演奏時間:4分30秒 

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スケルツォ Op.54-5

総演奏時間:3分00秒 

解説(0)

鐘の音 Op.54-6

総演奏時間:5分00秒 

解説(0)