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ショパン :ポロネーズ第7番「幻想」 変イ長調 Op.61

Chopin, Frederic:Polonaise no.7 "Fantaisie" As-Dur Op.61

作品概要

楽曲ID:523
作曲年:1845年 
出版年:1846年 
初出版社:Leipzig, Paris, London
献呈先:Anne Veyret
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ポロネーズ
総演奏時間:12分00秒
著作権:パブリック・ドメイン
※特記事項:ポロネーズ番号はパデレフスキ版による。

ピティナ・ピアノステップ

23ステップ:展開1 展開2 展開3

楽譜情報:5件

解説 (1)

執筆者 : 塚田 花恵 (1143文字)

更新日:2010年4月1日
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【作曲】1845-46年

【出版】1846年に、パリ(出版社:Brandus)、ライプツィヒ(出版社:Breitkopf & Hartel)、ロンドン(出版社:Wessel)で出版

ショパンの晩年の傑作とされている作品。弟子のヴェイレ夫人に献呈されたこの作品は、ピアノ独奏曲としては最期の大曲である。この曲を書いたとき、ショパンは肉体的・精神的に困難な状態にあった。1843年頃からショパンはたびたび病床についていたが、同時にジョルジュ・サンドとの関係も破局へと向かっていたのである。この作品は、そのような極限の状態で生み出された。

「ファンタジー(幻想曲)」という名を与えられたこのポロネーズは、厳格な形式を持たず、即興的に音楽が広がっていくかのように聴こえる作品である。そこではあたかも即興演奏のように、多種多様な音楽的要素が現れる。その中には「主題」のように聴こえるにもかかわらず回帰しない素材もあり、聴き手は音楽の「出来事」の連続を予測することができないのである。

しかし、全体はラプソディーのように流れていくにもかかわらず、各部分は入念に結びつけられている。前の素材から次の素材が生み出されるような感覚、また、異質な素材が挿入されることによって流れが中断されるような感覚が作られ、それによって音楽の満ち干が生み出されているのである。

全体は、以下のような三部に区分できる。

第I部:序奏(1-23小節)-A(24-65小節)-エピソード(66-91小節)-A(92-115小節)

第II部:B1(116-147小節)-C(148-180小節)-B2(181-205小節)-C(206-213小節)-序奏(214-215小節)-B2(216-225小節)-推移(226-241小節)

第III部:A(242-253小節)-C(254-288小節)

第I部は、即興演奏を思わせる序奏で始まる。ポロネーズのリズムによって主要主題Aが導入され、ここでAs-durが明確になる。主題Aが次第に熱を帯びて広がっていくと、舞曲らしい性格のエピソードが挿入される。そして主題Aが、叙情的で流れるような三連符の伴奏にのって回帰する。

第II部は、ノクターンのように装飾的な主題B1で始まる。この主題は、後に現れる主題B2と、音楽的な実質を共有していると見ることができる。作品の中心には、「緩徐楽章」のような雰囲気のC主題が置かれている。これがB2主題によって中断されたあと、C主題が短く回帰する。冒頭の序奏が再び現れると、B2主題がppで断片的に蘇り、再現部を準備するパッセージに突入する。このパッセージは、ポロネーズのリズムを伴うものである。

第III部では、As-durで主題Aと主題Cが再現して、頂点に達する。

執筆者: 塚田 花恵

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