ローゼンブラットのソロ作品の中では現時点において最高の充実度を持っている。この曲について作曲者は「現代のピアノ演奏において最も効果的なメソードを取り入れ、更に極めて典型的なジャズの特徴(スイングジャズ)を組み合わせている。」と述べている。歴史的な芸術家たちはこのパガニーニの主題に魅力を感じ、作品に取り入れてきた。リスト、ブラームス、ラフマニノフ、ルトスワフスキー、近年ではファジル・サイ、そしてローゼンブラットがそこに加わる。本作品では、第1変奏冒頭の爆発的なリズム、野性的なベースライン、右手で奏される4度の和音などが強烈な印象を与える。各変奏は高度な構築性を持っており、最後にはフーガが置かれている。フーガは常に疾走感を帯びており、破壊的なフィナーレとなっている。世界初演はDmitri Ratser。
なお、作品中の幾つかの変奏は音楽家などの「肖像」であるという。第1変奏は「Gino Vannelli」、第2変奏は「Modern Brahms」、第4変奏は「Modern boogie」、第6変奏は「Swing」、第7変奏は「Thelonius Monk +Oscar Peterson」、第9変奏は「Bill Evans」、第10変奏は「Oscar Peterson」をイメージしているそうである。これらは作曲家自身による説明だが、楽譜には記されていない。
==(筆者コメント)====================================
超絶技巧である上に、拍子やリズムの表現も非常に難易度の高い作品だが、ローゼンブラットの魅力満載である。ローゼンブラット自身のこの曲の生演奏を間近で見学したことがあるが、大変ユニークな弾きっぷりで、まるでピアノと漫才をしているようだった。そしてベースの鳴らし方が絶妙だったのが強く印象に残っている。