モスクワ音楽院を卒業したカプースチンは、約20年にわたってジャズオーケストラと仕事をしながら、もっぱらオーケストラやビッグバンドとピアノのための曲を中心に作曲していた。1970年代の終わり頃になってピアノ曲の創作に興味を持ち始め、まず「スウィート・イン・オールド・スタイル」を完成させる。1984年に文化省からの依頼によって「ソナタ・ファンタジー」(ピアノソナタ第1番)を作曲したが、それに続く作品として中規模以上のまとまった作品をすぐに書かなくてはいけなくなった。すでに出来ていた1曲の小品(のちにこの曲集の第8番「フィナーレ」となる)をもとにして、新たに7曲が一気に書き上げられた。8曲は、全体で一続きの作品となるように調性の配置などが考えられている。各曲には、まずロシア語でタイトルがつけられた。ジャズの語法であるスウィングやブギウギ、ロックやラテンのリズムの使用など、これまでのクラシック音楽では馴染みのなかった要素が散りばめられていて、聴く人を飽きさせない。全曲は続けて奏されるのが望ましいが、数曲だけを抜粋して演奏するピアニストも多い。
カプースチンのピアノ作品の中で最もポピュラーな曲集で、ニコライ・ペトロフ、マルク=アンドレ・アムラン、ワディム・ルデンコ、ニコライ・ルガンスキーなど世界の多くのピアニストたちに取り上げられている。第7番がもっとも人気が高いようだが、日本では第1番、第8番あたりがよく弾かれている。