ベートーヴェン : ロンド・ア・カプリッチョ(「なくした小銭への怒り」) ト長調 Op.129
Beethoven, Ludwig van : Rondo a capriccio "Die Wut über den verlornen Groschen" G-Dur Op.129
作品概要
解説 (1)
解説 : 丸山 瑶子
(848 文字)
更新日:2011年5月13日
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解説 : 丸山 瑶子 (848 文字)
1795~98年に書かれたとされる自筆譜は、伴奏や強弱など未完の箇所が多い。死後出版の初版は、恐らく出版者のディアベッリが未完部分を補筆したとされる。有名な表題《奇想曲の中へぶちまけた、なくした小銭への怒り》は、第三者が自筆譜に書き込んだもので、ベートーヴェンの命名ではない。徹底的な主題操作など全体的に装飾的、即興的な要素が濃く、次々と変わるテクスチュアとほぼ無休動のリズムを特徴とする勢いの良い作品。自筆譜を即興のスケッチとみなす説もあるが、詳細は不明である。
主題は平行調を挟んだabaの3部構造で、各4小節は旋律の上行と半音の装飾音形によって統一されている。
134小節目から始まる主題まで、主題と近親調のエピソード及び主題に基づく移行部が交互に続くため、ロンド形式が展開すると思わせるが、主題が初めて主調以外のAs-durで現れ、主題旋律の逆行からゼクエンツへ転じ、ロンド形式から離れる。しかしこれにも疑問はない。というのも、そもそも自筆譜の指示は「Alla ingharese quasi un capriccio」であり、表題はもとより「ロンド」さえ作曲家の言葉にはないからである。
作品はその後、冒頭主題の操作に集中する。思いつきに任せたように主題の処理法を変えるさまはまさに「奇想曲」に相応しい。222小節以降は半音階的に変奏された主題が現れてはゼクエンツへ転じ、右手の走句を介して次のセクションへ移行する。296~377小節は和音進行の処理が中心となっている。全体は3つの部分に分けられる。まず主題と関連の薄い音形で始まり、主題2小節のゼクエンツへ(316小節~)、最後は主題が冒頭3音のリズムと跳躍上行という動機の骨組みまで還元される(350小節~)。
長大な主題操作を経て再び3部構造の主題全体が現れるが、初めは和音と装飾音形で主題旋律の輪郭線が辿られ、394小節で旋律の原型を作品の最後にようやくはっきりと打ち出す。コーダは主に右手と左手による主題旋律の部分的な模倣で紡がれる。
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