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バッハ :トッカータ BWV 916 ト長調

Bach, Johann Sebastian:Toccata G-Dur BWV 916

作品概要

作曲年:1707年 
出版年:1867年 
初出版社:Peters
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:トッカータ
総演奏時間:8分00秒

解説 (1)

執筆者 : 朝山 奈津子 (618文字)

更新日:2007年7月1日
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急速な冒頭楽章、並行短調によるアダージョ、そしてジーグ風のフーガという3楽章構成は、いっけん《イタリア協奏曲》を思わせる。実際、ある手稿資料では「協奏曲あるいはトッカータ」と題されており、そのばあい冒頭楽章では十六分音符のパッセージをソロ、三和音群をトゥッティとみなすことになるが、どちらもあまりに短く、まるで息切れするように長続きしない。むしろこうしたフレーズは、ドイツの伝統的なトッカータやプレリュードに見出されるものである。また、緩徐楽章とフーガにはトゥッティとソロの交代らしきものがないことから、協奏曲というのはあくまで見かけ、ないし解釈上のちょっとしたヒントとみなすべきだろう。

緩徐楽章冒頭左手の三和音は、前楽章の主題後半部を意識したと思われる。真の主題は5小節目のアルトにようやく現れる。模倣は厳格ではないが、はじめは装飾性の豊かな旋律の核となり、のちには息の長い掛留の対旋律に主題が浮かび上がる。

フーガの主題は付点リズムとトッカータ風の下行走句を組み合わせたもの。最後は3オクターヴを一気に駆け下りて終わる。この楽章、また冒頭のトッカータ楽章でも同様であるが、最終小節で八分音符ひとつのあとを休符で埋め、あまつさえフェルマータが付けられているのには、きわめて重要な意味がある。最後の音は装飾をつけたり、未練がましく引き伸ばしたりしてはならない。作曲家はあくまで、いささか唐突な離別ないし消滅をここで意図しているからである。

執筆者: 朝山 奈津子