1919年に完成し、その翌年にニューヨークにて、ルービンシュタインにより初演された。この作品の出版は、その後の1922年になされている。
アルベニスやグラナドスに続いてスペイン民族主義の頂点を築いたファリャは、ピアノ作品というよりもむしろバレエ音楽の作曲家として知られているだろう。そのようなファリャが、ピアノ特有の表現を通してアンダルシアを伝えようとしたのがこの作品である。尚、「ベティカ」とは、古代ローマ時代に遡るアンダルシアの名称である。遥か昔のアンダルシアに思いを馳せたファリャは、原題をラテン語で綴っている。
この作品の全体は、コーダを伴う「ABA’」の三部形式で書かれている。Aの部分は、フリギア旋法を基調としたアレグロ・モデラートの4分の3拍子。非常に狭い音程に集約された音群により開始する。そこから、左手が短3度を鋭敏なアーティキュレーションで浮き立つ。そして、このような音楽が、分散和音、グリッサンド、アラベスク風のパッセージと、多様に変形される。続くBの部分は、アンダンティーノのインテルメッツォである。この部分で拍子が8分の3拍子となる。そのような変化の中にも、短3度の音程を共有というAの部分との共通要素が見られる。また、この部分では、右手が一貫して左手に対するシンコペーションを強調する。しかし、そのようなリズムのズレは、この部分の曲想から、明白な差異というよりはむしろ、夢想的な雰囲気を醸し出している。A’以降、作品全体の終結まで、前進力に溢れて音楽が勢いよく進んでいき、曲を閉じる。