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スクリャービン : スケルツォ Op.46

Scriabin, Alexander : Scherzo Op.46

作品概要

楽曲ID:2588
作曲年:1905年 
出版年:1905年
初出版社:Belaïev
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:スケルツォ
総演奏時間:1分20秒
著作権:パブリック・ドメイン

解説 (2)

解説 : 山本 奈央 (331 文字)

更新日:2023年7月10日
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1905年に作曲。《スケルツォ》というジャンルに取り組んだのはこの作品のみである。スクリャービンが妻のヴェラ・イサコヴィチとスイスに移り住み、近くに移り住ませた愛人タティアナ・シュレゼールとの二重生活をしていた時期の作であり、それは、タティアナとのヨーロッパでの生活資金を集めていた時期に重なる。また、1905年は《交響曲第3番「神聖な詩」》作品43の初版を出版し、パリで初演された年でもあった。本作は三部形式の短い作品であるが、アウフタクト、半音階進行、房状和音の上行音形、左手の飛躍する伴奏などスクリャービン特有の作風で作曲される。作品の様式の通り、「Presto」で始まり、最後は「Adagio」で締め括られる。「急-緩-急」と変化がつけられた一曲である。

執筆者: 山本 奈央

演奏のヒント : 山本 奈央 (528 文字)

更新日:2023年7月10日
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【演奏のヒント】

この作品は、ABA’コーダからなる三部形式で構成されます。Aは、半音階進行が主旋律となっているため、和音の一番上の音を際立たせて他の和音に埋もれないようにしましょう。また、「Presto」でとても速いパッセージになりますので、軽く、そしておどけたような表現で演奏することが合っていると思います。(スクリャービンの作品、《悪魔的詩曲》作品36で使用される和音に似ており、同じ扱いで表現できると筆者は考えます)第16小節目から始まるBはAと対比し、叙情的な部分ですが、短い小節のなかでピアノ→フォルテ、クレッシェンド→フォルテ→ピアノなど細かなデュナーミクの指示があります。これは、スクリャービンが作品に用いるデュナーミクの一つになりますので、しっかりとつけてください。また第33小節目から第36小節目にかけて、右手は内声「F→Es」、左手は「D→Es」の半音が繰り返され、分断されますが、これもスクリャービンが度々使用する書法で、主に再現前に使用します。クレッシェンドの指示に沿って迫るように弾いてください。

『Scherzo=冗談』の意味のように、スクリャービンの遊び心が溢れたような作品です。これらの作風の特徴を掴んで演奏してみてください。

執筆者: 山本 奈央