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信時 潔 1887-1965 Nobutoki, Kioyoshi

  • 解説:仲辻 真帆 (1638文字)

  • 更新日:2018年3月28日
  •  信時潔は、日本において本格的な作曲活動を展開した一人であり、教育や翻訳も含めて現代に至る我が国の音楽文化の礎を築いた。

     1887(明治20)年12月29日に大阪で出生。父の吉岡弘毅は大阪北教会の牧師であったため、幼少期より讃美歌、西洋音楽に親しむことになる。1898年、実父の教徒であった信時義政と養子縁組をする。1901年からの4年間を大阪府立市岡中学(現在の市岡高校)で過ごした。同窓に、画家の小出楢重や、東京大学伝染病研究所長を務めた田宮猛雄らがいる。

     1906年には東京音楽学校(現在の東京藝術大学音楽学部)に入学。当時は作曲専攻の学科がなかったため、器楽部でチェロを専攻し、H.ヴェルクマイスターに師事した。一級上に山田耕筰、二級上には本居長世がいる。東京音楽学校の本科を卒業した後、信時潔は同校研究科に進学した。最初期の作品には、ピアノ曲《きえゆく星影》、合唱曲《春の弥生》、ヴァイオリン独奏曲《あやつり人形》などがある。

     1920年、チェロと作曲研究のため、文部省派遣生としてドイツに留学し、ベルリンではG.シューマンのもとで研鑽を積んだ。留学中には高い頻度で音楽会へ足を運び、R.シュトラウスが指揮する《影のない女》の他、R.ヴァグナーの《トリスタンとイゾルデ》やA.シェーンベルクの《浄夜》などを聴いた。1922年の帰国時には大量の楽譜や音楽書を持ち帰った。

     1923年より東京音楽学校の教授に就く。1931年に同校本科作曲部の設置が実現すると、信時は教授を辞して講師となった。1930年代には、信時の代表作品に数えられる曲が多く作曲されている。独唱曲《沙羅》、合唱曲《いろはうた》、ピアノ曲では《木の葉集》などがある。また、委嘱を受けて手がけた作品に《海ゆかば》や《海道東征》がある。『新訂尋常小学唱歌』所収の《一番星みつけた》や《電車ごっこ》、《ポプラ》なども信時の作品である。

     1941年には「東北民謡試聴団」の一員として東北地方を訪れ、同年にピアノ曲《東北民謡集》を、また1946年には合唱曲の《東北民謡集》を発表した。

     太平洋戦争後も作曲を継続して行い、《古歌二十五首》、《帰去来》、《中国名詩五首》などを完成させた他、《女人和歌連曲》や《古事記》の創作に最後まで取り組んだ。

     1963年、信時潔は文化功労者として顕彰される。翌年には叙勲、勲三等旭日中綬章の栄誉を受けたが、1965年8月1日、心筋梗塞のため他界した。

     下總皖一、橋本國彦、柏木俊夫、渡鏡子、山田一雄、髙田三郎、大中恩など信時の薫陶を受けた音楽家を数えると、枚挙にいとまがない。

     信時潔が作曲した校歌や社歌などの団体歌は約千曲ある。また、作曲および教育以外の信時の重要な活動として、教科書の編纂や翻訳が挙げられる。『新訂尋常小学唱歌』、『私たちの音楽』、『小学校音楽』などでは、作曲、編集、監修に携わった。さらに、1925年に初版が発行されてより現在まで版を重ね続けてきた『コールユーブンゲン』に代表される重要な翻訳も手がけた。

     特に21世紀以降、信時潔の業績再考が進んでいる。2005(平成17)年、新保祐司の著書『信時潔』が上梓され、2008年にCD6枚から成る『SP音源復刻盤信時潔作品集成』が発売された。2012年には信時潔音楽随想集『バッハに非ず』が出版されている。2015年12月31日をもって著作権の保護期間が終了し、パブリックドメインとなったことにより、作品演奏の機会も増加しつつある。

     《海ゆかば》に代表されるように、信時の作品が1940年代前半のラジオや式典で用いられたため、戦争協力者と目されたこともあった。しかし実際には、作曲者の意に反して楽曲が利用されていたという点に留意しておく必要がある。また、ドイツ古典派に範をとる堅実な作風で知られる信時だが、A.シェーンベルクやB.19バルトークなど当時の現代音楽への研究も熱心に行っていた点も追記しておきたい。

    執筆者: 仲辻 真帆
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    解説 : 須藤 英子 (382文字)

    更新日:2006年7月1日
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    About composer : 仲辻 真帆 (5844文字)

    更新日:2018年4月18日
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    木の葉集 木の葉集

    作曲年:1934 

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