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信時 潔 :唱歌《月》による変奏曲

Nobutoki, Kioyoshi:SHOUKA "TSUKI"NIYORU HENSOUKYOKU

作品概要

作曲年:1920年 
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:変奏曲

解説 (1)

総説 : 仲辻 真帆 (860文字)

更新日:2014年6月30日
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この変奏曲は、「でたでた月が」の歌詞で始まる唱歌《月》(《ツキ》、《お月さま》とも)を主題としている。《月》の初出は1910(明治43)年に発行された『尋常小学読本唱歌』。この唱歌集は、文部省が初めて編集した尋常小学校の教科書で、収録作品は『尋常小学唱歌』(1911~1914年発行)をはじめ、文部省が編集した唱歌集に引き続き掲載されていった。《春が来た》や《ふじの山》などは現在でも広く親しまれている。『尋常小学読本唱歌』は、当時の国語教材『尋常小学読本』に歌詞を求めた。それまで日本の唱歌は外国の歌曲に依拠するところが大きく、歌詞を日本語訳したり、旋律は西洋の歌曲をそのまま用いて新作の日本語詞を付与する(「作歌」、「填詞」と呼ばれる)方法により作られていた。一方、この唱歌集は全曲日本人の手で作曲された点に特徴づけられる。

《月》の作曲者は不明とされているが、変奏曲の作曲者である信時潔曰く、「旋律は多分島崎赤太郎先生の作かと思う」と述べている。また、彼はこの作品について、「童心のあふれたあのふしは楽しく変化することができ」るとして、変奏曲の主題にふさわしいことをほのめかしている。信時の回想では、《唱歌『月』による変奏曲》が作られたのは1910年頃ということだが、CD『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』の解説によると、1920~22(大正9~11)年頃の作品である可能性が高い。なお、益子九郎が信時の作品を管弦楽のために編曲した《小学唱歌「月」を主題とせる変奏曲》の楽譜も残っている。

信時は組曲、連曲および変奏曲を数多く手がけた。とりわけ、素朴で屈託のない主題が綾なすこの作品は、変奏曲の魅力が充分に引き出されている。調性、拍子、リズムを変じながらハ長調の主題が様々に展開されていくさまは、さながら月がときに陰りを帯び、また夜空に照り映えゆく様子を思わせる。

主要参考資料

・『信時潔ピアノ曲集』(東京:春秋社、1958年)。

・『SP音源復刻盤 信時潔作品集成』(東京:日本伝統文化振興財団、ビクター、2008年)。

執筆者: 仲辻 真帆
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