ミヨー :マズルカ(『六人組のアルバム』より)
Milhaud, Darius:Mazurka (Album des Six)
解説 : 西原 昌樹 (582文字)
1920年1月16日、評論家のアンリ・コレが「コメディア」(Comoedia)誌上で、6人の若手作曲家の作品を集めたコンサートを取り上げ「5人のロシア人、6人のフランス人、そしてエリック・サティ」と書いた。「六人組」誕生の有名な瞬間である。特定の理念を掲げず友情のみで結ばれた集まりは、その軽みがかえって第一次大戦後の世相に親和するものであった。サティとコクトーの関与もあいまって、彼らの存在が時代の象徴となり、後続の作曲家たちにも多大な影響を与えたことは音楽史の示す通りである。『六人組のアルバム』は、ドメ社のかねての依頼に応える形で、6人が一曲ずつピアノソロの小品を持ち寄ったものである。メンバー全員がそろった唯一の企画となった。ここでも彼らは何らテーマを設けることなく、個々の自由が尊重されている。ミヨーは1914年に書いた《マズルカ》をアルバムに提供した(作品番号なし)。4分の3拍子、Doucement(甘やかに)、調は定まらない。どこか鬱屈した雰囲気はミヨーの曲としては珍しい。ドビュッシーの六全音階と、ワグネリアン風のクロマティシズムを組合せたような書法も意外な感じがする。
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