シューマンのピアノ曲の中でも屈指の傑作で、1836年に着手されている。この曲は、リストが提唱した「ベートーヴェン記念碑建立募金」に寄付するために、「ベートーヴェン記念碑のためのオボルス(ギリシャ貨幣、寄付金の意):フロレスタンとオイゼビウスによる大ソナタ 作品12」と題して書き始められた。そして、1838年に曲は完成し、「幻想曲」という題名に変更され、作品番号17として1839年に出版された。
第1楽章「どこまでも幻想的かつ熱情的に演奏する」ハ長調
ベートーヴェンらしいソナタ形式で書かれているが、シューマン的な手法で展開される。
楽章の終わりの方では、ベートーヴェンの歌曲「遙かなる恋人に」の一部が現れる。
第2楽章「中庸の速さで、どこまでも精力的に」変ホ長調
当初この楽章には「凱旋門」という標題が付けられて、輝かしく壮大な行進曲となっている。
第3楽章「ゆるやかに演奏する。どこまでも穏やかに保つ」ハ長調
夢のように静かで、おだやかで、瞑想的な楽章。ベートーヴェンのピアノソナタ作品111 の終楽章を想起させるような曲だが、シューマン風のロマンティシズムに満ち溢れた曲である。