(全8曲)
「クライスレリアーナ」とは、E.T.A.ホフマンの小説に登場する「楽長クライスラー」から取ったタイトル。シューマンは自分より一世代上の作家E.T.A.ホフマンに傾倒しており、かなわぬ恋を描いたこの小説に自分とクララとの恋愛を重ねていた。この作品が生まれたのは、クララとの結婚に反対され苦しんでいた時期。音楽の創作が唯一の救いとなり、ピアノ作品の傑作が多く生まれたのもこの頃である。
一つの大きな主題のもとに小品をまとめるスタイルはシューマンの得意としていた形式だが、「クライスレリアーナ」は変奏曲でも小品集でもなく、各曲それぞれの表現が自然と統一へとつながるやり方が見事に結実している作品の一つ。
比較的単純な和声進行が、リズムを変えたり思いもかけない展開がなされたりして、大胆に広がっていく。情熱的ではあるが決して感傷的ではなく、文学的な詩情がダイナミックに音に表現されている。