シューベルト :ピアノ・ソナタ 第11番 終楽章 D 625 ヘ短調

Schubert, Franz:Sonate für Klavier Nr.11 Allegro f-moll

作品概要

作曲年:1818年 
出版年:1897年 
初出版社:Breitkopf und Härtel
楽器編成:ピアノ独奏曲 
ジャンル:ソナタ
総演奏時間:6分03秒
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解説 (1)

解説 : 髙松 佑介 (929文字)

更新日:2019年4月28日
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アレグロ、ヘ短調、4分の2拍子

3つの主題を持つソナタ形式で書かれている。

冒頭は、疾風怒濤を思わせるヘ短調の緊迫した十六分音符の動機で始まる。この動機はユニゾンで提示された後、第13小節から伴奏として左手に引き継がれる。これを背景として、右手にシンコペーションによる旋律が現れる。この旋律が8小節ほど続くと、再びユニゾンとなったのち、同主長調であるヘ長調で新たな主題が提示される(第27小節)。この第2主題は、十六分音符の動きが止まることで、第1主題とコントラストが付けられている。第2主題は、三連符による新たな伴奏を伴って再度提示され(第43小節)、変イ長調へと向かう(第55小節)。第2転回形の和音の連続や変イ短調の挿入によって当初は調性が安定しないが、第73小節において、第2主題を基にした動機素材による主題が変イ長調で現れる。この部分は、長さからすると小結尾部と呼ぶにふさわしいが、平行調による主題提示という点では、ソナタ形式の第3主題とも解釈できる。

第97小節に始まる展開部は二部分から成り、まず前半部は第1主題の素材の操作によって展開される。第129小節から後半部となり、新たな主題が変ロ長調で提示される。変ロ短調、変ト長調、嬰へ短調、イ長調へと目まぐるしく転調を重ね、第175小節から再現部となる。

再現部における第1主題領域は、対旋律の追加や旋律変奏といったように、単なる再現にはとどまらない工夫がなされている。こうした書法は、冒頭楽章のソナタ形式より中間楽章の形式や最終楽章のロンド形式に用いられることが多いことから、本楽章はソナタ形式の枠組みを援用しつつも冒頭楽章と差別化が図られていることが分かる。第201小節から第2主題が変イ長調で回帰する。この部分から、筆写譜では数小節を除いて右手のみ記されているが、第271小節からのコーダでは両手が再び書かれているため、再現部第2、第3主題の左手は提示部と同じため省略するというシューベルトの習慣が見て取れる。第3主題はヘ長調で回帰し(第247小節)、変イ長調への転調(第255小節)を経て、冒頭の十六分音符のユニゾンがヘ短調で回帰し(第271小節)、クレッシェンドの後、へ長調で静かに曲を閉じる。

執筆者: 髙松 佑介