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ブゾーニ : 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータから「シャコンヌ」(バッハ) ニ短調 BWV 1004
Busoni, Ferruccio : Chaconne --6 Solo a violino senza basso accompagnato--(J.S.Bach) d-moll BWV 1004
作品概要
解説 (1)
執筆者 : 横田 敬
(756 文字)
更新日:2006年12月1日
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執筆者 : 横田 敬 (756 文字)
アルトゥール・ルービンシュタインは、ブゾーニ自身が弾く《シャコンヌ》をパリで聴いたときのことを、次のように回想録に記している。「ヴァイオリンのために書かれたシンプルな旋律とハーモニーに見事な伴奏声部を寄り添わせ、彼は作品に豊かな衣を着せてみせた。これはピアノ音楽の傑作である。バッハ自身も容認したに違いないと、私は思う」。ブゾーニは、ルービンシュタインが「悪魔的なテクニック」と評し、理想と崇めたほどの優れた腕前のピアニストであっただけでなく、教師、作曲家、指揮者、理論家、編曲者、そして、バッハの楽譜校訂者としても有名であった。
《シャコンヌ》の原曲は、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番BWV. 1004の最終楽章である。「シャコンヌ」とは16世紀のスペインに由来する舞曲の形式のひとつで、短いバス声部が反復され、その反復の上部で次々と変奏が行われていく。この形式を高度に洗練したバッハの作品は、「シャコンヌ」の最高峰である言っても過言ではなく、ヴァイオリン曲としても非常に重要な作品のひとつである。
今日のコンサート・ピアニストのレパートリーに欠かすことのできないほどの1曲となっている《シャコンヌ》であるが、その理由は原曲がヴァイオリンという楽器の可能性を最大限に引き出した優れた作品であるというだけにとどまらない。ブゾーニのバッハ解釈が非常に独特なものであるとはいえ、この編曲にあたっても、そうした学術的な成果を背景としていることと並び、先に記したようにブゾーニ自身が卓越したピアニストであり、かつ作曲家・編曲者としても優れた人物であったこと、これらさまざまな要因により、編曲された《シャコンヌ》もまた、ピアノという楽器の可能性と響きの豊かさを最大限に生かした作品となりえているのである。