1934年6月作曲。同年作曲の橋本の「三枚繪」同様、日本舞踏家である花柳寿美に献呈されている。「Dance Coquette」と英語名のタイトルが付されている通り、コケティッシュで雅な日本女性の踊りを想起させる冒頭部は、伴奏部分に小太鼓のような裏打ちが入り、日本舞踏の風情を余す所なく伝える。
「ドビュッシーやラヴェルの様式と日本風ペンタトニックとの極上の融合物である。」と片山杜秀氏により評されている(※)。
楽譜は、全音楽譜出版社よりピアノピースが出版されている。(校訂者、和田則彦)出版譜では、テンポの記載が四分音符=160に対し、自筆譜では四分音符=100になっているが、併記されたQuassi alla breveのテンポ感を留意すると、四分音符=100では実現が難しく、校訂後のテンポで演奏するのが適当と思われる。
※『日本の作曲20世紀』(音楽之友社)p.200