サン=サーンスは、1867年、パリの万国博覧会のためにカンタータを作曲し、レジョン・ドヌールの勲章を受けた。すぐれた芸術家として公式に認められ、更に1868年、《ピアノ協奏曲第2番》でも大きな成功をおさめた。充実した日々を送っていたサン=サーンスが、この翌年1869年に作曲したのが、《ピアノ協奏曲第3番》である。しかし、同年ライプツィヒで行われた初演や、1877年パリにおける初演では好評を得ることができなかった。現在でもサン=サーンスの他の協奏曲と比べて、演奏される機会はあまり多くない。
演奏所要時間は約25分。
第1楽章:モデラート・アッサイ 変ホ長調 4分の4拍子
ピアノの静かなアルペッジョがつくりだす渦のような響き。それにのせてオーケストラの各パートが、転調しながら第一主題を歌いつぐ。音楽の高まりをうけてピアノ、オーケストラがそれぞれ雄大に主題を歌う。第二主題は変ロ長調で、ffとなり緊張感が増す。続くピアノパートで、漂うような動きの第三主題が静かに奏されたのち、「カデンツァのように」と記されたピアノ独奏となる。本来、カデンツァは展開部の後におかれるのが一般的であったため、この箇所も批判の対象とされた。つづくアレグロ・アニマートでは、三つの主題が巧みに展開され、ピアノの見せ所にもなっている。カデンツァを経て、再現部へ。続くコーダはアニマート。第一主題が奏され、力強く楽章を締めくくる。
第2楽章:アンダンテ ホ長調 4分の3拍子
弦楽器と管楽器による序奏から、大胆な音づかいがみられ、幻想的な響きを生み出している。しかし当時、これらは受け入れられず、批判の的となった。弦楽器による静かな第一主題、つづくピアノ左手による第二主題。最後はオーケストラによってこの第二主題が奏されるが、これが三楽章への移行部としての役割を果たしている。切れ目なく次の楽章へ進む。
第3楽章:アレグロ・ノン・トロッポ 変ホ長調 4分の2拍子
オーケストラの緊張感のある序奏。ピアノが躍動感のある主題、副主題を提示し、それをオーケストラが受け継ぐ。そして続く第二主題は、四分音符と八分音符からなる単純なものである。これが何度も繰り返されながら展開する。ピアノとオーケストラがそれぞれ主題の受け渡しを繰り返しながら、曲は進行し、最後は華やかに曲をとじる。この楽章では、展開の手法や調性変化の乏しさなどが指摘されることも多い。