ラフマニノフの4曲あるピアノ協奏曲の中で、さらにいえば、ピアノ協奏曲というジャンルにおいても、最も人気のある最高傑作の一つ。わかりやすい旋律美、完璧な構造、ピアノスティックな華やかさなど、非常に魅力的な作品。1905年、グリンカ賞を受賞。
モスクワ音楽院卒業後、《前奏曲 嬰ハ短調 作品3-2》で一躍有名になったラフマニノフは、新しい協奏曲の作曲を依頼され、1899年頃からこの曲にとりかかった。しかしその後、ラフマニノフは極度の神経衰弱に陥り、作曲が全くできない状態になってしまった。1901年、治療により病気が完治し、創作意欲を大いにとりもどした時期に、この曲が完成した。彼の病気を治療したダール博士に献呈された。
第1楽章:モデラート ハ短調 2分の2拍子 ソナタ形式
8小節にわたりピアノで奏される荘重な和音、その後、分散和音、アルペッジョに続き、登場する管弦楽の圧倒的な第一主題。大きなインパクトをもって聞き手を魅了する。変ホ長調の第2主題はラフマニノフならでは、センチメンタルで、大変甘美な魅力をもっている。
第2楽章:アダージョ・ソステヌート ホ長調 4分の4拍子 3部形式
どこか懐かしさを感じさせるような、抒情性あふれる旋律が魅力的な楽章。ピアノの3連音符にのせて、クラリネットが第一主題を吹奏する。この主題が、多声的に扱われた後、ウン・ポコ・アニマートの中間部へ。この後、ピアノが華やかに、そして、燦然とカデンツァを奏する。主部が反復され、ピアノ和音によるコーダとなり、最後は静かに曲をとじる。
第3楽章:アレグロ・スケルツォアンド ハ長調 2分の2拍子
管弦楽の序奏に続き、ピアノが中心となる主題を奏する。スタッカートで奏され、非常におどけた雰囲気が印象的である。オーボエとヴィオラによって奏される第二主題は、第一主題とは対照的に、ラフマニノフらしい叙情的な美しさにあふれている。展開部では、第一主題の変形、第二主題の要素の再現がみられる。勢いをもってコーダにむかい、最後は圧倒的な全合奏により堂々と曲を閉じる。