シューベルト : ピアノ・ソナタ 第4番 第1楽章 D 537 Op.164
Schubert, Franz : Sonate für Klavier Nr.4 Mov.1 Allegro, ma non trop
作品概要
解説 (1)
解説 : 髙松 佑介
(675 文字)
更新日:2019年4月28日
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解説 : 髙松 佑介 (675 文字)
アレグロ・マ・ノン・トロッポ、イ短調、8分の6拍子
ソナタ形式を取る。冒頭、フォルテでイ短調の主和音によって幕を開けると、属九の和音に向けてpからクレッシェンドする。この前楽節は3小節から成り、属九の分散和音による後楽節2小節に続いて、主題が再度提示される。主題の不安定な性格は、デュナーミクの幅のみならず、3小節+2小節という不定形の拍節構造によっても打ち出されている。主題の再提示以降はイ短調に留まらず、提示部の時点で遠隔調へと幾度も転じる。
総休止によって区切られた後、ヘ長調で第2主題が提示される(第28小節)。平行調ではなく、長三度下の長調を第2主題に選ぶことは、シューベルトにとって決して規則違反ではなかった(例えば《未完成交響曲》D 759を参照)。両主題は、強弱の点や性格の点でコントラストをなしている。
提示部末では動機の反復によって転調が重ねられ、これにより展開部が導入される(第73小節)。展開部も総休止によって2つの部分に区切られており、シャープを持つ調で始まり、強音で勢いのある前半部と、フラットを持つ調で始まり、弱音で抒情的な後半部との対比が特徴的である。
展開部がニ短調の半終止で閉じると、総休止の後、第1主題がニ短調で回帰する。下属調による再現は、モーツァルトのピアノ・ソナタハ長調K. 545第1楽章で有名だが、すでにシューベルトはピアノ・ソナタ第2番D 279や第3番D 459でもこの手法を用いている。5度上の調へと進行した提示部の調関係を利用して、第2主題はイ長調で回帰し、冒頭動機がコーダとして顔を覗かせて幕となる。
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